Research Abstract |
Wntのco-receptorの一つであるLRP5の変異によって哺乳動物の個体レベルで骨量が変化することから,Wntシグナルが骨量調節に関与することが示唆されている.そこで,骨芽細胞分化を誘導するBMP2とWntのシグナルの相互作用を明らかにすることを目的とした.C2C12細胞に,Wnt3a,Wnt5aの発現プラスミドを導入しstableなcell lineを樹立した.これらの細胞にBMP2を加え24時間培養後のId1 mRNA量を調べたところ,Wnt3a-C2C12細胞ではBMP2によるId1mRNAの発現誘導が低下した.Id1 promoterを用いた解析から,BMP2に応答するBMP-response element(BRE)がWnt3aによる転写抑制に関与していた.すなわちBREレポーターIdWT4F-lucのBMP2もしくはSmad1/4による転写活性化は,Wnt3a,活性型β-catenin,Tcf1いずれによっても抑制された.他方,Lef/Tcf結合領域を含むpTop-Flashでは,活性型β-cateninによって増大した転写活性を,BMP2は濃度依存的に増大させた.これらの結果からSmadとβ-catenin,Tcf1が相互作用し,それぞれのシグナルを調節する機構の存在が考えられた.転写複合体中のβ-catenin,Tcf1へSmad1/4が結合すると転写活性が増大する,この結合のaffinityとBREにおけるSmad1/4の量的なバランスがこの応答を調節する可能性が示唆された.また,Id1 mRNAの発現調節を介しWntシグナルが骨芽細胞分化に関与する可能性が考えられた.骨芽細胞の分化過程において細胞内のSmad分子とβ-catenin,Tcf1がお互いに作用し合いそれぞれのシグナルを相互に調節し合っていることが考えられた.
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