Research Abstract |
関東首都圏下の看護系団体の研修に参加した看護師で同意の得られた194名の意識調査から,以下が明らかになった。せん妄のケアシステムの整備状況では,(1)ケアのガイドライン設置,(2)チームカンファレンスの定期的な開催,(3)ケア提供者の職務責任範囲の明確化,(4)個人および組織内の学習機会の多さが,(4)実際に実施されるケア(体内環境の調整,リスクアセスメント,環境調整,睡眠確保,安全確保)と関連が高かった。これら(1)〜(4)の因子が,「せん妄のケアに伴う困難感」の軽減と関連が高かった。 関東首都圏の特定機能病院・外科病棟のデータ分析結果から,同意の得られた患者110名中,せん妄の発生率は,ニーチャム混乱・錯乱スケール得点23点以下(中程度の混乱)が28名(25.5%),そのうち「過活動型」のせん妄状態を呈した患者は4名であった。看護師のアセスメントとケアとして事例から抽出された特徴は,せん妄初期段階の直感的なアセスメント,疼痛不快などの除去,医師に対する鎮痛剤や向精神薬の「予測的事前処方」の依頼,体動センサーの設置,目の行き届く場所へのベッド移動,看護助手の見守り要員としての活用が挙げられた。課題として,術後疼痛管理の方針が消極的な場合,せん妄の不適応行動を増大させやすい,看護師から担当医師や精神科医への連携に時間差があるため,対応が後手になる傾向が挙げられた。 上記病院のせん妄ケア事例研究会における看護過程展開の振り返り,関連図作成やロールプレイなどの学習活動について,過去数年次に渡り分析したところ,以下の特徴が抽出された。すなわち(1)システム改善と医師・専門ケアチームとの連携,(2)対象者の主観的世界の理解と患者中心思考への変換,(3)身体アセスメントの技術向上と安楽を重視したケア,(4)せん妄発症に対する予測能力の向上,(5)(1)〜(4)から得られた看護師のケア困難感の緩和であった。
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