2004 Fiscal Year Annual Research Report
壁際廃屋葬の研究:西アジアにおける遊牧的適応の成立過程
Project/Area Number |
16401015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藤井 純夫 金沢大学, 文学部, 教授 (90238527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 裕 東京家政学院大学, 人文学部, 助教授 (60261749)
本郷 一美 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (20303919)
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Keywords | 壁際廃屋葬 / ヨルダン / ジャフル盆地 / ジャバル・ジュハイラ / 初期遊牧民 |
Research Abstract |
本年度は、本研究課題に関わる以下二つの作業を実施した。 1)ヨルダン南部ジャフル盆地の先土器新石器文化遺跡、ジャバル・ジュハイラ(Jabal Juhayra)の地形測量・試掘調査を実施した。その結果、この遺跡がワディの南側斜面に広がる小規模(約0.5ba)の集落遺跡であり、おそらくは分水嶺以西の母集落から派生した小型の夏営地であることが判明した。これによって、ジャフル盆地における遊牧化の起点が特定できたことになる。次年度に本格的な調査を実施し、壁際廃屋葬の実体解明に取り組みたい。 2)これと平行して、周辺地域の分布調査も実施した。これによって確認されたのが、後期新石器文化の葬祭遺跡ハラル・ジュハイラ(Harraa al-Juhayra)である。発掘調査の結果、この遺跡が、今回の調査対象であるジャバル・ジュハイラ(先土器新石器文化B後半)と、前回の科研で調査したカア・アブ・トレイハ西(後期新石器文化後半)との、まさに中間段階(後期新石器文化前半)の遺跡であること、しかも、最初期の遊牧民が営んだ(壁際廃屋葬を伴う)擬住居ケルン墓の集合体であること、が判明した。 両遺跡は、最末期の定農定牧民と最初期の遊牧民をそれぞれ代表しており、しかも互いに近接している。従って、この二つの遺跡を調査することによって、ジャフル盆地における遊牧化の経緯をきわめて具体的に追尾できるであろう。こうした基本的枠組みを定めたことが、本年度調査の成果である。次年度には、ジャバル・ジュハイラの発掘調査を実施し、遊牧化の起点となった集落における壁際廃屋葬の実態を解明すると同時に、ハラル・ジュハイラおよびカア・アブ・トレイハ西に見られる擬住居ケルン墓への変遷をも含めた、初期遊牧の全体像を示したい。
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Research Products
(3 results)