2005 Fiscal Year Annual Research Report
壁際廃屋葬の研究:西アジアにおける遊牧的適応の成立過程
Project/Area Number |
16401015
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藤井 純夫 金沢大学, 文学部, 教授 (90238527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 裕 東京家政学院大学, 人文学部, 助教授 (60261749)
本郷 一美 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (20303919)
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Keywords | 遊牧民 / 壁際廃屋葬 / 西アジア / 新石器時代 / 考古学 |
Research Abstract |
本年度の調査は、遊牧化の起点となった先土器新石器文化B後期の定住集落ジャバル・ジュハイラから後期新石器文化前半の初期遊牧民擬集落ハラル・ジュハイラへの移行期の様相を解明する作業に集中した。その対象として、先土器新石器文化B後期末の小型集落遺跡ワディ・アブ・トレイハを発掘調査し、以下のような結論・見通しを得た。 1)ワディ・アブ・トレイハは、ジャフル盆地の真っ直中に位置する季節的な小集落である。出土動物骨の内容や周辺の自然環境から見て、ガゼルなどの狩猟を主目的にした季節的な出先拠点であったと考えられる。ガゼルの幼年個体が多いことから、春季の居住が予想される。おそらくは、西方の山地部に位置する本村(ジャバル・ジュハイラがその最有力候補)を起点とする出先拠点であろう。 2)出土動物骨には、ヒツジやヤギの家畜個体も少量含まれていた。従って、本村と出先拠点との間の、直線距離にして約20kmの、移牧が行われていたことになる。 3)この集落は、(大型矩形遺構と小型円形遺構で構成される)住居の基本構成の点でも、また(向かって右から左へ一線的に展開する)集落形成原理の点でも、後の擬集落の原型と見なし得る。その意味で、この小集落で実施されていた季節的な移牧が、後続の時代における遊牧化へと直接つながったと考えられる。 4)さらに重要なのが、遺構Gの建物前壁(ファサード)で壁際廃屋葬の実例を検出したことである。この発見によって、先土器新石器B後期の移牧拠点における壁際廃屋葬が、後期新石器文化の初期遊牧民による擬似的な壁際廃屋葬へと継承され、その結果、後者に特徴的な擬集落が形成された、という当初の作業仮設がほぼ完全に立証された。
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Research Products
(4 results)