2007 Fiscal Year Annual Research Report
壁際廃屋葬の研究:西アジアにおける遊牧的適応の成立過程
Project/Area Number |
16401015
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藤井 純夫 Kanazawa University, 文学部, 教授 (90238527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 裕 筑波大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (60261749)
本郷 一美 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (20303919)
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Keywords | 壁際廃屋葬 / 西アジア / 遊牧民 / 墓制 / 新石器文化 / ワディ・アブ・トレイハ |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、ヨルダン南部ジャフル盆地の北西に位置する先土器新石器文化Bの移牧拠点、ワディ・アブ・トレイハ遺跡(Wadi Abu Tulayha)の発掘調査を実施した。本年度は、東III区の西半と西III区を新たに発掘した。その結果、1)この小型線状集落が、東III区西半の蜂の巣状建築複合体(Complex 00)から始まったと考えられること、2)その年代が、先土器新石器文化B中期にまで遡り得ること、3)南III区にこれとほぼ同時代の水槽(csitern)が掘られていたこと、4)よってこの移牧拠点の経営が、蜂の巣状建築複合体と水槽群の組み合わせ(先土器新石器文化B中期)から始まり、二峰性遺構群とダムの組み合わせ(先土器新石器文化B後期)へとシフトしたと考えられること、などの事実が判明した。 遊牧的適応に先行する移牧開始時点の様相を明確に捉えたことが、今年度調査の最大の成果である。これによって、移牧民の壁際廃屋葬から初期遊牧民の擬住居ケルン墓葬へという一連の墓制変遷を確定することができた。また、ジャフル盆地遊牧化の過程を墓制面からより高い精度で追跡できることも、再確認された。西アジアのみならず、世界史全体の重要課題であった遊牧化の経緯について、一つの具体像を示し得たことは意義深い。このほか、西アジアにおける移牧の開始が先土器新石器文化B中期にまで遡ること、よって、ヤギ・ヒツジ家畜化の時点から直ちに移牧が始まっていたと考えられること、その時点ですでに水槽やダムなどの水利施設が移牧先集落に伴っていたこと、などの新事実も明らかになった。
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Research Products
(4 results)