2006 Fiscal Year Annual Research Report
北メソポタミアの古代王国"タビテ"の歴史考古学的調査
Project/Area Number |
16401018
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Research Institution | Kokushikan University |
Principal Investigator |
沼本 宏俊 国士館大学, 体育学部, 教授 (40198560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 重郎 筑波大学, 人文社会科学研究科, 助教授 (30323223)
新井 勇治 愛知産業大学, 造形学部, 助教授 (20410855)
西山 伸一 独立行政法人東京文化財研究所, 研究員 (50392551)
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Keywords | 考古学 / アッシリア / 粘土板文書 / 楔形文字 / シリア / テル・タバン / メソポタミア / 中期アッシリア時代 |
Research Abstract |
シリアのテル・タバン遺跡の発掘調査成果と同遺跡から出土した撰形文字資料の解読成果について下記する。 1.テル・タバン遺跡の発掘調査:本年度も中期アッシリア時代(前13-11世紀)と古バビロニア時代(前18世紀)の生活層に重点を置き発掘を行った。1)前年度発掘した古バビロニア時代の粘土板文書が出土した土器焼き窯を継続発掘した結果、3×2mの方形窯であったことが判明した。窯の埋積土中から新たに14点の粘土板文書が出土した。これらの文書の中では封筒入り粘土板文書(13×6.5cm)が注目に値する。2)中期アッシリア時代の巨大な地下式焼成煉瓦造墓を発掘した。この墓は入口部、坑道部、前室、主室に分かれ、主室は6×3m、残高2.5mで天井部はアーチ形に造られていたと推測されるが、大きく破壊されていた。主室の埋積土からエンリル・アプラ・ウツーという皇太子の銘文入り煉瓦が出土しており、同皇太子の墓であったことが判明した。墓の構造と規模は首都アッシュールで発見された王墓に酷似しており、タバンが中期アッシリア帝国の西方進出の最重要拠点であったこと示唆をする貴重な遺構の発見である。3)複数のトレンチを発掘し、古バビロニア時代の生活層を確認した。同時代の生活層は中期アッリア時代の生活層よりも広範囲に及んでおり、テル・タバンは古バビロニア時代には既にハブール川流域の要衝として君臨していた可能性が強くなった。 2.本年度の調査では計44点の楔形文字資料を発見した。その内訳は粘土板文書16点、封筒2点、煉瓦片25点、円筒碑文片2点である。粘土板文書と封筒は古バビロニア時代、煉瓦片と円筒碑文片は中期アッシリア時代のもので、これらの文字資料の解読を山田が行った。粘土板文書の大半は書簡で、封筒入り粘土板文書はユーフラテス川流域のハナ国の首都テルカの王がタバンの王に土地、家屋を下賜した際の契約が記された不動産下賜文書であったことが明らかになった。これまでの研究では古バビロニア時代のテル・タバンのあるハブール川流域が、どの国の勢力下にあったのか全く判然としなかったが、この封筒入り文書の記述からハナ国の配下であったことが明らかになった。さらに粘土板文書の解読成果から、テル・タバンは古バビロニア時代のマリ文書にも頻出するハブール川の要衝地"タバトゥム"であったことを実証した点は本年度の調査では最大の成果である。 北メソポタミアの闇の時代前2千年紀の解明に向けて、学会待望の新資料と新事実を提供することができたという点で、本年度も画期的な調査成果をあげることができたと言える。
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Research Products
(6 results)