2004 Fiscal Year Annual Research Report
ケーララの場所を巡る宗教的実践と政治的実践に関する人類学的研究-クラヴァの事例
Project/Area Number |
16401026
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
内山田 康 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (50344841)
|
Keywords | 葬送儀礼 / 聖地理 / 私的所有 / 非偶像 / 普遍化 / 精神化 |
Research Abstract |
平成16年度は、(2004年)7月中旬から9月初旬にかけてケーララ南部でフィールドワークを行った。7月17日にトリヴァンドラム南のヴァルカラで近年流行のブラーマン的葬送儀礼を見た。これは金銀の押出しとピンダと呼ばれる米の玉を使って祖先を海岸から祖霊界に送り出す儀礼である。ケーララのヒンドゥー教徒は土地に祖先と共に住んできたが、近年土地の商品化および流動化と共に、祖先を海岸から送り出すことが流行になっている。ケーララの聖地理における祖霊の動きは大まかに東の山岳地帯の森へと祖先が向かっていた、あるいは祖先が茂み(カーヴ)に留まる傾向があったものが、カルキダカ月の新月の翌日(2004年は7月17日)に海岸の聖地から祖霊界へと送り出される傾向へと大きく変化した。聖地理の重心が東の山から西の海へと移ったということができる。 ケーララ滞在中、3箇所のクラヴァの居住地(パッターリ、パーヴンバ、ヌーラナード)で調査を行った。全ての場所に共通することは、クラヴァの土地が、非クラヴァから構成される寺委員会の構成員たちによって私的所有され(ゴム園になっている所が多い)、クラヴァの祖霊たちが棲んだカーヴがヒンドゥー寺院に作り変えられている事実である。この変化はいわゆるサンスクリタイゼーションで説明しつくすことが出来ない。石、赤い旗、あるいは憑依で表わされていた神が、像で表象され、ブラーマン祭司によって媒介されるようになる。形(パーパン)の無い非偶像的神が形を持つ神に代わること、書かれた物語を持たず力(シャクティ)をもった土地が、書かれた歴史を持った寺院になることが何を意味するか考察した。祖先がモノ的な(身体的な)存在を止めることとこの偶像化・普遍化・精神化には何か関係があるのではないか。(このテーマで2005年3月2日に京都で発表した。)調査の終わりに、元クラヴァの祖霊が住んだカーヴであった複数のヒンドゥー寺院における土地問題に関わる裁判に関する記録を集めた。
|