2005 Fiscal Year Annual Research Report
ケーララの場所を巡る宗教的実践と政治的実践に関する人類学的研究-クラヴァの事例
Project/Area Number |
16401026
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
内山田 康 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (50344841)
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Keywords | 聖地理 / 私的所有 / ヒンドゥー化 / 場所 / 法制度 / 精神化 / 近代化 / 部族 |
Research Abstract |
平成17年度は(2005年)8月初めから9月上旬にかけておよそ5週間にわたってインドのケララ州南部のヌーラナードを中心に、カースト上昇運動、メインストリーム化してゆく政治への参加、ゴム園の労働者としての生活、伝承のテキスト化に伴う神話の変容、クラヴァの神の祭られ方の変化、祖先との交流の仕方の変化、祖先と土地への愛着を、(1)近代化して行く人と場所の関係、(2)その関係の中に半ば埋め込まれたパーソン、(3)新しい法律の枠組みとの弁証法的な関係の中から作られてくる新しい寺院という問題群の視点から参与観察した。 ヌーラナードにはマラナダと呼ばれるクラヴァの神が祭られた山が3つあるが、そのいずれもが非クラヴァのヒンドゥー教徒たちが組織する宗教法人によって経営されるヒンドゥー寺院に変容しつつある。この制度的な変化が起こる以前に、マラナダはゴムプランテーション化していた。クラヴァはこの過程の中で土地なしの労働者になっていた。非クラヴァのヒンドゥー教徒がクラヴァの神々が棲むマラナダを寺院にする手続きは、法律に基づいたもので、クラヴァの慣習に基づいたものではないことも判明した。近代国家が保障する近代的な法律が、このような宗教の制度的、物質的変化を媒介していることをさらに深く探求するために、地元の弁護士の協力を得て、このような変化を巡る訴訟、およびこのような宗教法人が作られる具体的なプロセスを調べた。 このようにクラヴァの生活は様々な方向から近代化しているが、滞在中に「死者が跳ねる」(チャーヴトゥッラル)と呼ばれる降霊会に参加して、近代化のプロセスに抗することばが、霊自身のことばとして語られるのを聞くことが出来た。この成果は9月13-14日にイギリスのサセックス大学で開かれたSouth Asian Anthropologist Group ConfereceにおいてByelaws and astrologers : altering Kurava shrines in Keralaとして発表した。
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