2004 Fiscal Year Annual Research Report
氷河コア解析による北太平洋の気候・大気輸送物質変動の復元
Project/Area Number |
16403005
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
白岩 孝行 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (90235739)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中塚 武 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (60242880)
立花 義裕 東海大学, 総合教育センター, 助教授 (10276785)
山縣 耕太郎 上越教育大学, 学校教育学部, 助手 (80239855)
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Keywords | 雪氷コア解析 / 古気候変動 / アラスカ / 風送塵 / PDO / 氷河 |
Research Abstract |
4月28日から6月3日にかけて、アメリカ合衆国アラスカ州ランゲル山に滞在し、全長216mの雪氷コア掘削を実施した。同時に、気象観測、エアロゾル観測、表層積雪調査、電波氷厚探査、GPS干渉測位による氷河流動測定、氷体内温度・傾斜測定を実施した。掘削された雪氷コアは、凍結状態のまま日本国内に輸送し、低温科学研究所の分析棟積雪試料室に保管した。8月から3月末にかけて、この雪氷コアの切断・分析を進めた。表層50mについては、2003年に試掘した雪氷コアを用いて分析を進め、水素同位体比、トリチウム、ダスト、X線精密密度の分析を完了した。その結果、表層50mは1991年から2003年にかけて堆積した積雪であることが、水素同位体比、トリチウム、ダストの季節的変動から判明した。なお、トリチウムの季節変動が雪氷コアに明瞭に記録された記録は世界的にも大変珍しく、貴重な試料と言える。一方、X線密度については、その他の季節変動と異なる挙動を示し、新たな気候情報を示す可能性があると考え、現在、風速との関係から解析を継続している。216mコアについては、バルク密度の測定が終了した。これによれば、氷化深度が90-100mと極端に深く、これまで山岳氷河で記録された中では最深であることがわかった。その理由として、ランゲル山では極端に年間積雪量が多いこと、氷厚が800mと深く歪速度が小さいこと、山岳氷河としては氷温が低い(10m雪温:-17℃)こと、などが考えられる。 氷河の流動測定の結果、掘削地点付近では約5cm/日の流動速度であることがわかった。この値は、1976年に測定された値とほぼ同等である。エアロゾル観測の結果は、大気場の状態によってエアロゾルの濃度ならびに粒径分布が大きく変わることがわかった。この結果は、コア中のエアロゾル濃度と粒径分布から堆積当時の大気場を推測できる可能性を示したことになり、大きな成果と言える。電波氷厚探査の結果、ランゲル山の中心部分では氷厚が800mに達することが世界ではじめて示された。しかし、今回得た測定点は限られており、今後更なる観測が必要である。 以上の成果に基づき、2005年に再度ランゲル山を訪問し、掘削孔の温度・傾斜・鉛直歪測定、表層積雪調査、アイスレーダーを用いた表層付近の積雪構造探査を実施する予定である。これらの補足観測により、216mコアの解釈がより深くなることが期待される。216mコアについては、水素同位体比、主要イオン、微量金属、X線密度、ダストの測定を実施し、年度末までに成果をとりまとめる予定である。
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Research Products
(2 results)