2006 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア熱帯林冠相における社会性昆虫を中心とした生物間相互作用に関する研究
Project/Area Number |
16405009
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
竹松 葉子 山口大学, 農学部, 助教授 (30335773)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岡 亮平 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (00111948)
乾 陽子 大阪教育大学, 教育学部, 助手 (10343261)
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Keywords | 社会性昆虫 / 生物間相互作用 / シロアリ / アリ / 国際情報交流 / マレーシア / ゴキブリ |
Research Abstract |
本年度は、マレーシアランビルヒルズ国立公園における調査を3つの観点からおこなった。 (1)シロアリの多様性と物質分解 特にコウグンシロアリ4種に焦点を当てて、その分布とすみ分け、物質運搬能力の違いを調査した。その結果、4種の森林内での分布密度及び分布域が異なっており、H.umbrinusは樹上採餌者、L.longipesは地表採餌者、H.hospitalis及びH.bicolorはマルチ採餌者であることが分かった。さらに、物質運搬量は4種で異なり、H.hospitalisは他種の3-4倍の餌を一度に運搬することが分かった。運搬量が多いことや生息域が広いことが、森林内でH.hospitalisが優占種であることの理由の1つと考えられる。 (2)コウグンシロアリの防衛及び同巣認識機構 コウグンシロアリH.bicolorにおける「囲い込みフェロモン」の分泌部位と物質特定を行った。その結果、兵蟻頭部の難揮発性成分を含む画分に対して職蟻は有意に反応を示すことから、兵蟻は難揮発性成分を分泌する事で職蟻を兵蟻の囲み内に留めている可能性が示唆された。また、同種の職蟻と兵蟻の道しるべフェロモンを探索した。その結果、道しるべフェロモンは腹部に存在する複数の物質からなり、カースト特異的に働く物質も存在すると思われる。 (3)アリとゴキブリ、着生植物の相互作用 林冠部での着生植物のセンサスを行い、着生植物が形成するdomatia内に生息する昆虫相を調査した。その結果、特にフタバガキ科Shorea属の樹冠にPolipodiaceae科の着生シダが生育しており、そのいずれもシリアゲアリC.difformisが営巣していた。また、この蟻が除去された樹冠では、着生シダが枯死し、母樹の被食度が高まった。このことは母樹-着生シダに蟻を含めた三者での栄養共生関係の存在を示唆している。また、行動実験により宿主蟻の攻撃度は他種蟻に対して非常に高いが、このゴキブリに対してはほとんどないことが明らかになった。このことからこのゴキブリも栄養的に上記共生関係に何らかの役割を果たしている可能性が高い。
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Research Products
(5 results)