2005 Fiscal Year Annual Research Report
第三紀後期の大陸間移動を伴う哺乳類の分子系統学的研究
Project/Area Number |
16405011
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 仁 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 助教授 (40179239)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉手 英利 山形大学, 理学部, 教授 (90163675)
土屋 公幸 東京農業大学, 農学部, 教授 (30155402)
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Keywords | 生物地理 / 分子系統 / 核遺伝子の塩基配列 / 種の多様性 / 遺伝的多様性 / 第三紀後期の環境変動 / ハツカネズミ属 |
Research Abstract |
ハツカネズミ(Mus musculus)の亜種間関係と進化的背景を探るため、日本およびユーラシア大陸産個体を中心にミトコンドリア遺伝子(cytb)、Y染色体特異的遺伝子Sryおよび核リボソームRNA遺伝子について分子系統学的解析を行なった。その結果、1)北海道、東北は、東南アジア型亜種と北中国型亜種の混合型であることが判明した。解析に用いたマーカー毎に混合の地理的パターンは大きく異なり、Sryではほぼ北中国型のみであるのに対し、リボソームRNA遺伝子の場合は、北中国型が優先するも、東南アジア型の遺伝的要素が低頻度ながらどの地点においても観察される頃向を示した。二つのハツカネズミの系統が日本列島に移入し、ある程度の進化的時間が経過し、拡散により、各マーカーにおいて特異的な遺伝的構造が観察されたものと推察された。列島におけるこのハツカネズミの遺伝的構造のパターンより、日本人の起源を推察すると、朝鮮半島経由で北中国タイプが移入したことに加え、1)北海道経由で北から東南アジア型の移入、あるいは2)北中国型の移入より以前に、南から東南アジア型の移入、の可能性が示唆された。 ユーラシア大陸に広く分布するカヤネズミ(Micromys minutus)の地理的構造をミトコンドリア遺伝子のcytb遺伝子とcontrol regionをマーカーとして解析した。第四紀後期にヨーロッパとアジア(列島を含む)とを結ぶ遺伝子の流動があり、広大な地域間でカヤネズミは遺伝的交流を行なっていたことが判明した。第四紀の氷期のヨーロッパでの大規模な絶滅がその移動の引き金になっているものと推察された。カヤネズミは第四紀のユーラシア温帯域の環境変遷を知る上でも有益な情報をもたらしてくれるものと思われる。
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Research Products
(7 results)