2005 Fiscal Year Annual Research Report
野生新世界ザル集団に対する糞DNAを用いた色覚型判定と色覚変異関連行動の解析
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16405015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河村 正二 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (40282727)
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Keywords | 色覚 / 視物質 / オプシン / 新世界ザル / 進化 / 霊長類 / 国際情報交換 / コスタリカ:カナダ:イギリス |
Research Abstract |
昨年度、私はコスタリカ共和国サンタロサ国立公園に生息する野生フサオマキザル2群(各18頭)とチュウベイクモザル1群(25頭)を対象に糞の採集とそこからの赤-緑視物質遺伝子型の判定を行い、色覚変異が実際に野生新世界ザル集団に存在し、その頻度分布は種や集団により大きく異なることを示した。今年度はその結果を受け、次の結果を得た。 1.オマキザルとクモザルの赤-緑視物質を再構成し吸収光波長を測定して、オマキザルには3種類、クモザルに2種類の最大吸収光波長を異にする対立遺伝子があることを実証した。 2.オマキザルの1群において全個体に対し赤-緑視物質遺伝子の塩基配列をイントロン領域も含めて決定し、その塩基多様度が中立対照遺伝子であるeta-globin pseudogeneや他遺伝子のイントロンに比較して有意に大きいことを集団遺伝学的方法で明らかにした。さらに赤-緑視物質遺伝子のTajima D値が有意に0より大きいのに対し、中立対照遺伝子のそれは0と有意差がないことを明らかにした。これらにより赤-緑視物質遺伝子に平衡選択が働いていることを示した。 3.野生オマキザル、クモザルに対して採食行動の観察を行い、オマキザルにおいては2色型色覚が3色型色覚に比べ、昆虫食の効率が高いことを示した。クモザルにおいては3色型色覚が2色型色覚に比べ、果実食の効率が高いとはいえないことを示した。これらの結果は、3色型色覚の優位性は従来言われてきたほど大きいものではなく、各色覚型にそれぞれ有利な点があることによるニッチの多様化によって色覚多型が持続している可能性を示唆した。
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Research Products
(4 results)