2006 Fiscal Year Annual Research Report
野生新世界ザル集団に対する糞DNAを用いた色覚型判定と色覚変異関連行動の解析
Project/Area Number |
16405015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河村 正二 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教授 (40282727)
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Keywords | 色覚 / 視物質 / オプシン / 新世界ザル / 進化 / 霊長類 / 国際情報交換 / コスタリカ:カナダ:イギリス |
Research Abstract |
新世界ザルの色覚種内多様性の持続機構に関して様々な適応進化仮説があるが、実際の野生集団に対しそれらの検証を試みた例はない。昨年度までにコスタリカに生息する野生新世界ザル(オマキザル2群各約20個体とクモザル1群約20個体)を対象に、糞DNAを用いて赤-緑視物質遺伝子の塩基配列多様性を調査し、色覚多様性が実際の野生群に存在することを明らかにしている。平成18年度において、私はこれらの野生群に対し、まず赤-緑視物質遺伝子塩基配列多様性の集団遺伝学解析から色覚変異が中立進化で説明できないのかどうか、次に行動観察により色覚型と採食効率との関連について解析した。その結果、まずcoalescence simulationに基づいた塩基多様度、塩基多型度、Tajima's D値の評価からこの多様性が中立変異でも人口動態効果でも説明できないことを示した。そして野生オマキザルの昆虫採食に注目し、色カモフラージュした昆虫の採食効率は野生下でも2色型の方が3色型より実際に有意に高いことを世界ではじめて示した。さらに果実食であるクモザルの果実採食効率において2色型と3色型間に有意差がなく、色覚型によらず果実採食効率と正相関するのは果実と背景葉との色のコントラストではなく明度のコントラストであることを示した。これらのことは色覚変異の維持において2色型や(ヒトで言うところの)異常3色型色覚に積極的な意義があることを野生動物で初めて示した画期的な成果である。また、ヒトの色覚異常に関して、積極的な意義の検討を促すという新たな研究展開を導いている。
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Research Products
(4 results)