Research Abstract |
本研究は黄土高原下流域に位置する洛恵渠灌区洛東地区において実施した。 地下水位調査およびそのイオン分析結果から,地下水EC値(ECw)は地下水位の上昇に伴い高くなり,特に3m以浅の場合に顕著に高くなる傾向が確認された。地下水イオンの分析結果をトリリニアダイアグラムで表すことにより,全体的にNa^+が陽イオンの多くを占め,水深が深い井戸では陰イオンに占めるHCO_3^-の割合が高くなっていること等が明らかになった。SAR, RSCともに,危険度の高い井戸が全体の約40%を占めており,渇水時の補助灌漑としての地下水利用は土壌のナトリウム化,アルカリ化を進行させる危険性をはらむ。全体的にSAR値が高く,本地区の難透水性化の進行が懸念される。 土壌の塩類集積状況については,表層土の塩類の集積量および組成は面的に多様な分布状況を示し,それらは地形,土壌の物理的性質(土性,排水性)の分布とよく対応していることが明らかとなった。本地域は洛河による河岸段丘が複数面形成されているが,最も年代の古い上位段丘面は粘質で排水性が悪く,塩類集積の危険性が非常に高いと判定され,大量の塩類集積箇所が局所的に点在している。一方,下位段丘面は,砂質で透水性にすぐれ,塩類の集積量は少なかった。しかし,ナトリウム割合の高い塩類組成で,8〜8.5の高い土壌pHを示し,アルカリ化の進行が認められた。リンゴ,ナツメ等の落葉果樹の大半にはアルカリ化に伴う障害が発生していた。これらの結果から,'地域内における灌漑・土壌管理は,決して画一的に行うのではなく,地形,土性に適応させて行う必要のあることが明らかとなった。 土壌SARが高く塩ストレス下のワタ栽培については,土壌Ca施用が根のNa濃度を低下させ,葉面積および乾物重を増加させる効果を有すること,葉面散布によるCaの施用は,低土壌Ca時に生育改善効果が期待できることが判明した。
|