2006 Fiscal Year Annual Research Report
中国黄土高原下流域における物質循環を利用した塩害対策と農地の保全
Project/Area Number |
16405032
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Research Institution | TOTTORI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
北村 義信 鳥取大学, 農学部, 教授 (80284008)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本名 俊正 鳥取大学, 農学部, 教授 (90093624)
安田 裕 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 助教授 (60136538)
山本 定博 鳥取大学, 農学部, 助教授 (30200801)
恒川 篤史 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 教授 (60227452)
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Keywords | 洛恵渠灌区 / 物質循環 / 塩類集積 / 地下水水質 / 地下水管理 / 灌漑農業 / 塩害対策 / 土壌管理 |
Research Abstract |
本研究は、黄土高原下流域の洛恵渠灌区洛東地区において実施した。研究実績の概要を以下に示す。 (1)対象地域の観測井80点の地下水挙動を継続してモニタリングし、地下水位、電気伝導度(EC)、各イオン濃度、観測井周辺土壌の飽和抽出液のEC等に関するデータを蓄積し、地下水挙動の分析を行った。 (2)対象地域の地下水のイオン分析の結果、対象地域の地下水組成はNa_2SO_4/NaCl型およびNaHCO_3型と判断された。また、これらの地下水を灌漑水として使用する際には、次の危惧点があることが明らかとなった。(a)地下水位が高い(地下水面が地表に近い)場合、地下水はECが高く、土壌の塩性化の危険性を持つ。(b)地下水位が低い(地下水面が地表から遠い)場合、地下水のECは低いが、HCO_3^-の割合が大きく残留炭酸ナトリウム(RSC)が高い傾向を有し、土壌のアルカリ性化が危惧される。(c)陽イオンの主体がNa^+であり、全体的にナトリウム吸着比(SAR)が高いため、土壌のソーダ質化の危険性を持つ。 (3)黄土高原からの流出土砂を塩害農地の修復に活用する技術、すなわち流水客土の効果を実施後数年の圃場において物理化学的に評価した。 (4)対象地域に存在する地下水質についてクラスター分析を行い、EC値とSAR値をベースに4グループに類型化した。また、各クラスターグループの空間分布を分析した。 (5)風乾土水分含量と土壌ECから土壌の粘土含量を簡易に推定する式を導き、対象地域の深さ1mまでの粘土含量の空間分布をマッピングし、土性と塩類集積の多面的な分布(土壌の塩性化、ソーダ質化)との関係を明らかにした。 (6)対象地域で多発している果樹(リンゴ、ナシ等)の栄養生理障害と土壌ソーダ質化の関連性を調査した。障害葉(主に黄白化)は正常葉に比べ鉄含量が著しく低下しており、高pHの土壌環境による鉄の不可給化が原因と考えられた。また、障害葉には黄白化以外にカール、綾小化など様々な症状が重複して発現しており、複数の養分元素欠乏(あるいは過剰)が複合的に発現している可能性も示唆された。
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Research Products
(3 results)