Research Abstract |
農業の集約化や森林の違法伐採が著しいインドネシア西ジャワ州のチタルム川上流域を対象に,衛星画像(Landsat TM, ETM+)を用いて,最近十数年間の土地利用/被覆変化を明らかにした。解析を始めた1980年後半時点で,この地域の森林面積は少なく,その分布は新旧火山体に限られていたことがわかった。2003年までの2年間毎の森林減少のパターンを解析した結果,一般にいわれている1997年のアジア経済危機後の森林伐採増加はこの地域では確認できず,火山体に残存した森林が,山麓部から一定速度で伐採され,耕作地に転換されていることがわかった。 こうした場所の集落において,森林資源の利用や森林伐採に関する環境意識を調査したところ,燃料資源や家畜飼料を獲得する場として森林資源への依存度は高いものの,近年の人口増加や経済的な理由から,森林域での違法伐採・耕作が行われていることがわかった。しかし,違法耕作者も含めて森林伐採がもたらす環境への悪影響は十分に理解されており,さらに,トゥンパンサリ(森林育成を行いながら下層で耕作を行うシステム)といった地域農民による適正森林管理への参加意思も高いことが明らかとなった。 また,森林域から遠い集落では,燃料木などの獲得場所としてバンブータルン(タケ類の優占する二次林・人工林)が,森林に替わって重要な位置を占めていることがわかった。こうしたタイプの農林業的土地利用は,伝統的なアグロフォレストリーシステムの一形態として捉えることができ,粗放的な管理ながらある程度の収入源となっていることがわかった。そのため,森林の違法伐採を回避し,また耕作地に転用されてしまった場所の再生に利用できる有用な土地利用形態であると考えられた。そのため,上記のバンブータルンや,他の地域にみられるミックスタルン(果樹などの樹木が優占する二次林・人工林)の生態的,経済的,社会的持続性を明らかにする,植生調査や土壌侵食量調査,農村社会経済調査などを開始した段階である。
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