2005 Fiscal Year Annual Research Report
アジア諸国に拡散する薬剤耐性マラリアのゲノム疫学研究
Project/Area Number |
16406012
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Research Institution | Research Institute, International Medical Center of Japan |
Principal Investigator |
狩野 繁之 国立国際医療センター(研究所), 適正技術開発移転研究部, 部長 (60233912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河津 信一郎 国立国際医療センター(研究所), 適正技術開発移転研究部・適正技術開発研究室, 室長 (60312295)
畑生 俊光 群馬大学, 医学部, 助手 (60344917)
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Keywords | マラリア / 薬剤耐性 / ゲノム / 疫学 / アジア / 国際研究者交流 / タイ:ラオス:ベトナム:フィリピン |
Research Abstract |
第2年度も初年度から継続して、アジア諸国における薬剤耐性マラリアの拡散のメカニズムをゲノム疫学的に検証・解析することを目的に、以下の成果を得た。 1.薬剤耐性マラリア原虫株の収斂・拡散のメカニズム FCR-3株(薬剤感受性):K1株(薬剤耐性)を8:2の比率で混合した場合、CQ感受性を示したが、pfcrt遺伝子のDirect SequenceではK1型が検出された。この結果からIC_<50>値が感受性値を示しても、Direct Sequenceでは耐性型を検出してしまう現象がin vitroの系で確認された。一方、低CQ濃度(〜80nM)下の培養でFCR-3株とK1株の混合比の変化を調べた結果、混合時のK1株の比率が低くても24時間後にはすでにK1株が優勢になった。これらのことから、ゲノム疫学手法による分布解析で、我々が報告した定量real time PCR法導入の意義を再確認するとともに、いわゆる薬剤耐性原虫の選択のメカニズムをin vitroの系で再現したといえる。 2.海外調査研究で得られた分子疫学的知見 タイ、フィリピン、ベトナム、ラオスの熱帯熱マラリア原虫株を得て、薬剤耐性関連遺伝子の変異型シークエンスを詳細に解析した。タイの多剤耐性マラリア流行地域(ミャンマーとの国境地帯)やフィリピンの流行地域(ルソン島、パラワン島、ミンダナオ島)では、CQ耐性型(K76T)の株の頻度が80%以上であったのに比べ、ベトナム南部の株では、CQ感受性型(K76)の頻度が69%と多く、CQ耐性型(K76T)の頻度が26%と少ない点が特徴であった。次にベトナム株のPfCRTの72-76番目のアミノ酸配列を調べると、東南アジア、アフリカ、南米で確認されている感受性型のCVMNKが最も多かった。一方CQ耐性型変異(K76T)を持つ株では、CVIET、CVIDT、CVMDTの3種類が観察された。CVIETはタイのK1株(CQ耐性株)と同じで、東南アジア諸国やアフリカ諸国からも報告されている。また、CVIDTは隣国のカンボジアから報告されている。CVMDTはこれまでに報告がない新しいアミノ酸配列だと思われる。アジア諸国の薬剤耐性遺伝子の分布が明らかになりつつある。
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Research Products
(6 results)