2006 Fiscal Year Annual Research Report
アジア諸国に拡散する薬剤耐性マラリアのゲノム疫学研究
Project/Area Number |
16406012
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Research Institution | International Medical Centre of Japan |
Principal Investigator |
狩野 繁之 国立国際医療センター(研究所), 適正技術開発移転研究部, 部長 (60233912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河津 信一郎 国立国際医療センター(研究所), 適正技術開発移転研究部適正技術開発研究室, 室長 (60312295)
畑生 俊光 群馬大学, 医学部, 助手 (60344917)
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Keywords | マラリア / 薬剤耐性 / ゲノム / 疫学 / アジア / 国際研究者交流 / タイ:ラオス:ベトナム:フィリピン |
Research Abstract |
第3年度も、アジア諸国における薬剤耐性マラリアの拡散のメカニズムをゲノム疫学的に検証することを目的に、特にベトナムの株を中心に解析を進めた。 材料と方法としては、昨年度用いたのと同じベトナム南部(Binh Phuoc州)で採取された患者分離株39株を用い、K76Tの変異を含めた72-76番目のアミノ酸配列をすべて決定するとともに、pfcrt遺伝子近傍のマイクロサテライト(MS)DNAマーカー3座位(B5M77,2E10,PE14F)の解析を行った。 昨年度の結果として、そのうち10株(26%)が、PfCRTの72-76番目のアミノ酸配列がCQ耐性型(CVIET, CVIDT, CVMDT)と報告し、さらにその内CVIETはタイのK1株(耐性株)と同じ配列であると報告した。ところが、感受性株のすべての配列を決めたところ、それらはCVMNKという配列のみであり、耐性株3種の野生型と考えられるCVIEK, CVIDK, CVMDKという株は認められなかった。一方、近傍MSDNA解析では、CVIETを示すベトナム株の3つのMSDNAパターンは、同じCVIETを示すタイK1株のMSDNAのパターンと異なっていた。またCVIDTを示す耐性株でも、K1株とは異なるMSDNAパターンを示した。 考察として、昨年度同地域のCQ選択圧は他の地域と比べ低い可能性を示唆したが、やはり同地域でおよそ3分の2の分布を示すCVMNKの感受性株の耐性変異型CVMNTは検出されなかった。また、上記のMSDNA解析の結果をあわせて考えて、ベトナム南部のCQ耐性型原虫の起源は、タイのK1株が同地域へ拡散してきたと考えるよりはむしろ、同地域に棲息していた原虫集団の中から耐性型の変異が生じてすべて置き換わった、あるいはK1株とは異なる耐性原虫が他の地域から拡散してきたことに起因すると推察された。 本研究結果は、アジアの耐性株め起源はタイをその根本としてそれが拡散したという定説を一部覆すもので、pfcrt遺伝子のgenotypeによる研究成果として新しい知見である。今後その証拠をさらに固め、アジア全域にわたる検証を行うには、MSDNAのマーカー解析をメインとした新たな研究課題を必要とする。
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Research Products
(5 results)