2005 Fiscal Year Annual Research Report
エジプト地域におけるビルハルツ住血吸虫感染による膀胱癌発生機序の分子病理学的解明
Project/Area Number |
16406021
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
鰐渕 英機 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (90220970)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福島 昭治 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (00137077)
魏 民 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助手 (70336783)
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Keywords | エジプト地域 / ビルハルツ住血吸虫感染 / 膀胱癌 / TCC / SCC / FGFR / 増殖因子 / 増殖因子受容体 |
Research Abstract |
本研究では、エジプト地域における膀胱癌に対して、ビルハルツ住血吸虫感染のある膀胱癌の組織学的な特色および発生機序について、非感染の膀胱癌と比較し、病理学的ならびに分子生物学的に明らかにすることを目的とした。腫瘍の発生には増殖因子、増殖因子受容体の異常が関与していることがよく知られている。そのなかでも線維芽細胞増殖因子Fibroblast growth factors (FGF)は、細胞の増殖、転移、分化に重要な役割を担っており、これまでこれらの因子が結合する受容体は4種類同定された(FGFR1-4)。TCCにおいてFGFRの変異あるいは異常発現が多数報告されているが、ビルハルツ住血吸虫感染による膀胱がんにおいてはまだ報告がなされていない。そこで、エジプト地域における膀胱癌についてFGFR遺伝子の発現を検討した。膀胱癌52例のうち、感染例は37例で、TCC 16例、SCC 21例であった。非感染感染例は15例あり、SCCを認めず、すべてTCCであった。ビルハルツ住血吸虫感染はSCCの発生に有意に相関した。浸潤度別では,pTa 9例,pT1 17例,pT2以上26例であった。感染と浸潤度の間には有意な相関関係は認められなかった。また、年齢、感染率、組織型および浸潤度においていずれも男女間に差は認めなかった。FGFR1,2,4は正常膀胱上皮細胞の細胞質に発現を認め、染色陽性腫瘍細胞が50%以下のがんを発現低下と判定した。正常膀胱上皮細胞がFGFR3染色陰性で、がん細胞の細胞質に染色性を示し、その染色陽性腫瘍細胞が10%以上のがんを過剰発現と判定した。膀胱癌においてFGFR-1、FGFR-2およびFGFR-4の発現低下がそれぞれ53%、24%、14%認められたが、いずれの発現と感染、浸潤および組織型に関連性が見られなかった。FGFR-3の過剰発現は全体として43%に見られたが,非浸潤がんで9例中7例(78%)、浸潤がんで43例中15例(35%)であった。ビルハルツ住血吸虫感染とこれら遺伝子の発現との間に有意な差は見られなかった。しかし、全てのSCCに感染が認められたことから、ビルハルツ住血吸虫の感染がSCCの発生に関与していることが明らかになった。
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