2005 Fiscal Year Annual Research Report
視覚系末梢の受容野分布を模倣した空間レティクルの分散配置による実時間物体追尾
Project/Area Number |
16500102
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
三橋 渉 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (40017421)
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Keywords | 実時間追尾 / 空間フィルタ速度推定法 / ラドン変換 / カルマンフィルタ / 単眼カメラ |
Research Abstract |
本研究は,特殊な画像処理装置を使用せずに市販のPCと単眼カメラを用いて前方移動物体を実時間で追尾し,衝突防止・一定車間距離の保持などの用に供することを目的として行われた.初年度購入のロボットアームの指先に単眼カメラを装着し,移動物体との距離を一定に保持して追尾するシステムを完成することができた. 1.本研究では,空間フィルタとして機能する微小なGaborレティクルを画面上に分散配置して像面内の動き場の分布を推定することを特徴としているが,その数に応じて計算量が増え実時間性能が低下する傾向があった.そこで,この年度ではフルビデオレートでの実時間追尾の達成を目的として研究計画を立てた. 2.実時間追尾を実現するためには専用の画像処理装置を利用する方法とアルゴリズムの改良によって高速化をはかる方法がある.当初計画ではこの年度で専用ハード化を行う予定であったが,速度場推定アルゴリズムの改良によって計算時間の大幅な削減が可能となり,画像処理専用のハードウエアを利用しなくても完全にビデオレートで対象物体の追尾が可能となった.最終年度の研究実施内容を以下のように要約する. (1)従来の空間フィルタ速度推定法と同様に画像の一次元射影(周辺分布)に対して速度場を推定する方法を採用した.像面の水平・垂直・45度・135度の4方向に対して動画像をラドン変換し,並進と拡大・縮小の動きを連立して解くことで速度場を推定した.これにより,追尾対象の像の表面テキスチャが速度推定精度に与える影響を,初年度の研究成果に比べて低減できた. (2)動きを拘束する制約条件式に基づいて追尾対象物体が像面内に占める領域の大きさを適応的に限定し,追尾対象の移動に応じて計算区間を移動・拡大縮小させる方法を採用した.これにより対象の動き推定の精度が向上した. (3)運動推定からカメラ姿勢の制御までに含まれるむだ時間および運動推定時に加わる誤差の影響を避けるため,カルマンフィルタを構成して制御応答の改善をはかった.この結果,初年度で追尾可能だった物体の移動速度よりも高速な動きに対しても安定した追尾性能が獲得でき,追尾精度も向上した. こうして,前方を移動する物体の像の位置と大きさを一定に保持する追尾システムを,単眼カメラと市販のPCを用いて実時間フルビデオレートで動作させることが可能となった.本研究で開発した速度推定手法は,像の動きとは無関係な画像輝度の変化に対しては頑健ではないので,その克服が今後の課題である.
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