Research Abstract |
1.交付申請書に記載したとおり,本研究の目的は次のようなものである。即ち; 3次元データとして得られた顔の表面を多くの微小平面に分け,それらの法線群を考える。顔は曲面を形成していることから,多くの法線は頭部の中心に向かう。今,1つの平面を頭部内に想定すると,法線はその平面と交点を持つ。それらの交点群はその平面上に分布を形成し,そのX, Y, Z方向の分散値はある想定平面の時最小になる。この時の平面を『顔平面』と呼ぶ。 顔平面に射影された交点分布や顔平面の係数は人によって異なり,また表情を変えることによっても変化すると考えられる。これまで別々の研究として捉えられてきた顔画像の研究は,顔平面により統一的に扱える可能性がある。本研究の目的は,顔平面による個人同定,表情認識の可能性を見出すことにある。 2.上記の目的を達成するために,昨年度は次に掲げる諸課題について研究を行い,種々の知見を得た。また,今年度は,それらの知見を更に検証し,得られた結果を国内学会並びに国際会議で発表した。 (1)測定環境の整備;本補助金により,現有設備に比し格段に分解能の大きい非接触3次元デジタイザを導入した。 (2)解の安定性の検討;多数の被験者の3次元顔データを取得し,顔平面の導出実験を行った。その結果,上記目的に記述した「分散最小基準」による導出よりも「距離最小基準」と名付ける導出方法の方が安定に顔平面を導出できることが分かった。この知見により,今後の顔平面は「距離最小基準」で求めることとした。 (3)顔座標系の決定とその安定性の検討;一般に,カメラに正対した被験者でも僅かに傾いて撮影される。この傾きを補正する基準は存在しない。本研究では,上記の顔平面を用いて顔の座標系を定義することに成功した。即ち,顔平面の法線方向を顔の正面方向とし,それに垂直な平面上に顔表面からの法線群がつくる交点分布を主成分分析して得られる2軸を求めてX-Y方向とすればよい。目や鼻など顔部品を用いないという意味で,提案した顔座標系は安定である。 (4)大量データの検証;昨年度は,喜怒哀楽を表す4表情(真顔,笑顔,怒り顔,驚き顔)のデータを30人の被験者から撮影し,Leave One Out法で,表情の分類実験を行った。分類手法として最近傍法を用いたところ,100%の分類率が得られた。今年度は,対象表情を6表情(真顔,笑顔,怒り顔,驚き顔,悲しみ顔,嫌悪顔)に拡げてデータを取得し表情分類実験を行ったが,一般人からの6表情取得が極めて困難であり,4表情分類に比肩できる分類率は得られていない。
|