Research Abstract |
本研究テーマにおいて本年度取り組んだ課題内容は主に自動車走行音の認識である. 我々は音響センサを用いて交通量を自動的に調査する手法を提案した.音響センサは照明の影響を受けず,広範囲の情報を得ることができるため,場所によっては画像センサより有用な可能性があり,画像センサのサポートにもなる可能性がある.音響センサによる自動的な交通量調査は,道路交通環境で音響センサによって録音された音(道路交通音)から,自動車が観測地点を通過したことを認識することで実現可能である.道路交通環境では多くの自動車が走行しているので,道路交通音には複数の自動車の走行音が混合した音が含まれる.したがって,音響センサによる自動的な交通量調査を達成するためには,混合した音が含まれる道路交通音から,自動車が観測地点を通過したことを認識しなければならない.道路交通音を対象にした従来の研究,自動車走行音の特徴として,周波数領域の特徴量を用いている.しかし,複数の自動車走行音の混合は,周波数特性が類似している移動物体同士の音の混合とみなすことができるので,周波数領域の特徴量のみを用いて移動物体の音の混合を表す特徴を求めるのは困難である. 本研究では,複数の自動車の音が混合している道路交通音を利用して,交通量を自動的に測定するために,自動車がマイクを通過する前では、道路交通音のパワーが徐々に大きくなり,通過後は徐々に小さくなることに着目した.パワーの時間変化部分を検出することで,自動車が観測地点を通過したことを認識する手法を提案した.また,複数の自動車の音が混合している場合に対処するため,ステレオマイクを用いた.実験の結果,複数の自動車の音が混合している道路交通音に対して,本手法は観測地点を通過している自動車を高い確率で認識できた.マイクを設置する位置について検討した結果と実験結果から,本手法を用いることで,片側1車線で道路の自動車が定常走行している場所(信号と信号の間)において,車道からある程度(2m以上)離れた場所に設置した音響センサを用いて交通量調査を行うことが可能になった.また,ステレオマイクを用いることで,他の自動車の走行音との混合があるときに認識率が向上する結果が得られた. 将来の課題としては,すでに開発した交通監視映像を用いた自動車の追跡手法と本提案手法との融合によりロバストに交通情報を自動的に抽出することである.
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