Research Abstract |
当該研究は,視覚系の情報処理機構,特に高ダイナミックレンジシーンの処理を行う順応機構とマッハバンドやクレークオブライエン錯視等の明るさ知覚の錯視を生じる機構をCMOSセンサとして実現することを目標としている.本年度は,以下の項目に関して研究を行った.(1)現有のディジタルカメラで取得した画像を用いて,絞りとシャッター速度,対象物体までの距離,対象物体と背景とのコントラスト等をパラメータとして,錯視を説明するモデルがどの程度の分解能で合焦エッジを抽出できるかを調べる,(2)昨年度までに検討した錐体ハードウェアモデルは単体のモデルで,光から電気信号への変換とその時間特性を記述するものである.本年度はこれに順応の空間特性を考慮し,並列化を行い,時空間的な錐体ハードモデルに拡張する.また,錯視を生じる機構のハードウェア化を行い,シミュレーションにより機能を確認する.(3)順応のモデル,錯視のモデルのいずれかが完成した時点で,その基本性能の工学的応用の可能性を探るため,VDECを利用して試作を行う. その結果,(1)について,絞り値1.4,シャッター速度1/60,ピント50cmに設定し,対象エッジの距離を変化させた画像に対してモデルを適用したところ,±3cmの範囲でマッハバンドが消失し,それ以外でマッハバンドが発生した.現在同様の実験を対象エッジのコントラストを変化させて,コントラスト依存性を調査中である.(2)について,順応の空間特性を模擬するため,周辺順応を考慮してハードウェアモデルを1次元に配置し,拡散抵抗網により順応レベルに空間的な広がりをもたせてPSpiceでシミュレーションを行った.定性的ではあるが明るさの空間的変化に対して場所により順応レベルが異なりそれぞれの領域で敏感に応答できることを確認した.また,錯視を生じる機構のハードウェア化に関しては,側抑制回路と差分検出回路について2次元回路を構成し,その機能を確認した.
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