Research Abstract |
本研究は,癌などによる乳房切除者を対象としたケア衣料を個人の身体状態,肌の色,求められる機能,個人の要望を考慮して設計できる対話型システム構築を目的とした. ケア衣料として,乳房を切除した女性のために胸部を覆ったまま入浴できる入浴着を対象とし研究を行なった. 開発者からの聞き取り調査や着用実験により,入浴着には,濡れても体にはりつかず着衣快適性があること,濡れても手術痕などが透けず,かつ着用していでも違和感がないこと,乳房の切除の程度や個人の体型に対応した形状であることが要求されることがわかった.そこで,湿潤状態の布の触感覚評価と視感覚評価,さらに,個人対応化のために乳房切除者用人体モデルの作製を行なった. 触感覚評価は,湿潤布のはりつき力を測定する装置を開発し,物性値と官能検査による官能値との関係を検討した.その結果,湿潤布の触感覚は,水分率とはりつき力を用いた重回帰式で求められ,湿潤時の着衣快適性を設計段階である程度予測できると考えられる. 視感覚評価は,肌モデル,傷モデルを作製し,その上に布をかぶせて着用状態を再現し,測色値と官能検査による官能値との関係を検討した.その結果,肌の色と布の色との色差が8以上であると着用による違和感があることがわかった.また,入浴着を着用すれば,入浴中でも傷は目立たなくなることがわかった.傷痕を隠すことに関しては既存の入浴着で良いが,着用における違和感を無くすためには,個々の肌にあった色のバリエーションや,湿潤状態での布の色が,肌の色に近くなるように設計する必要があると考えられる. 個人対応化のために,乳房の形状を変えることのできる対話型衣服設計用3次元人体モデルを作製した.健常側の胸を基準にし,乳房の大きさや形状を変化することができるため,個人の体型に合った製品設計時に有用であると考えられる. 本研究により,湿潤時の触感に優れ,個人の体形,肌の色,傷の状態に合わせたケア衣料の設計が可能となった。
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