Research Abstract |
健聴者を対象とした演奏可視化に関し,(1)演奏表情の可視化,および(2)演奏雰囲気の可視化という2種類のプロトタイプを構築した.いずれのシステムにおいても,演奏の最細粒構成要素である音符の属性情報ではなく,隣接音符間の関係から導き出される演奏表情の属性情報(テンポ,滑らかさ,強弱変化)を可視化のための情報として用いた.演奏表情の可視化および演奏雰囲気の可視化のいずれの場合においても,情報をどのように見せるか,という点について様々な可能性があり,ユーザにとってより分かりやすい表示方法の提示が今後の課題である. 聴覚障害者と音楽の関係についての基礎実験として,(1)聴覚障害者が特定の感情を込めてドラム演奏をする場合の演奏の傾向について,および(2)特定の感情を込められたドラム演奏の聴覚障害者による聴取についての2つの実験を行った.いずれも"悲しみ","喜び","怒り","恐れ"の感情を用いた.ドラム演奏について,打鍵間隔,打鍵強度などに関して分析を行った結果,4つの感情に関しての演奏傾向は健聴者と同じであることが明らかになった.演奏聴取については,(1)で行った聴覚障害者による演奏を聴覚障害者が聴き,どの感情を感じるかを述べさせたが,同じデータを用いた健聴者による聴取実験の結果と比べ,聴覚障害者と健聴者の聴き取りについて同様の傾向があることが明らかになった.以前の実験からアニメーションによるテンポ追従は難しいことが分かったが,これらの実験により,感情を指標とした演奏可視化システムをユニバーサルデザインで作り、演奏支援システムで用いることの可能性を明らかにできた. 構築した2つの演奏可視化システム,および,聴覚障害者と音楽に関する内容を,国際会議において発表した.
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