Research Abstract |
健聴者と聴覚障害者が共に音楽を楽しむことができるようなシステム構築のための基礎実験として,(1)感情を込めたドラム演奏の認識についての聴取実験,および,(2)感情を込めた図形描画とその認識についての実験を計画,実施した.いずれも"悲しみ","喜び","怒り","恐れ"の感情を用いた. ドラム演奏は,健聴者のプロとそれ以外,聴覚障害者の3種類を用意し,健聴者および聴覚障害者が聴取実験の被験者となり,演奏に認識する感情を聴き取った.両聴取者の聴取傾向は似ていたが,顕著な違いとしては,健聴者がプロ演奏をそれと認める(他の2種類の演奏に比べ,感情認識率が高い)に対し,聴覚障害者は3種類の演奏認識に関して有意差が認められなかったことである. 図形は,健聴者のデザイン専攻学生,聴覚障害者のデザイン専攻学生,聴覚障害者のそれ以外の3種類を用意し,健聴者(非デザイン専攻学生),聴覚障害者のデザイン専攻学生,聴覚障害者のそれ以外が読み取り実験の被験者となり,図形に認識する感情を読み取った.図形を3グループに描いてもらうにあたり,抽象的な図を引き出すことに困難があり,いくつかのものは,感情表現のメタファとして広く使用されている表現(涙型など)をしていた.それらの図形も混ぜた読み取り実験を行った結果,3被験者グループの読み取り傾向は似ていたことが判明した. 感情の聴き取りや読み取り実験が,健聴者と聴覚障害者との比較として行われたことはなく,今後,様々なアプリケーションへのユーザインタフェースの設計のよりどころとして活用されることが期待できる. 健聴者と聴覚障害者の感情を込めたドラム演奏およびその認識について国際会議において発表した.
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