2006 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症患者の「心の理論」と症状および対人関係障害に関する融合的研究
Project/Area Number |
16500163
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井村 修 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (20176506)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石垣 琢麿 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教授 (70323920)
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Keywords | 統合失調症 / 心の理論 / PANSS / 陽性症状 / 陰性症状 / 妄想観念 / 認知障害 / 神経心理学的テスト |
Research Abstract |
これまでの研究から,統合失調症患者は症状の重い者ほど,「心の理論」課題が困難であることがわかった。また「心の理論」課題の得点とPANSSの得点の相関分析から,陰性症状の得点が高い者ほど「心の理論」課題が困難で,情動の平板化やひきこもり傾向が見られ,安定した対人関係の維持に問題があることが示唆された。これらの結果は,「心の理論」の障害→他者の信念の誤読→妄想思考の発展というような,単純で直線的な因果論では,統合失調症患者の対人関係障害を説明できないことを意味した。 そこで18年度の研究では,認知機能の低下が見られず,かつ「心の理論」課題の達成が困難で,妄想的傾向を有する患者群の存在を確かめるため,これまでの関東の研究協力病院の他,琉球大学医学研究科高次機能医科学講座精神病態医学分野(近藤毅教授)の協力を得てデータを収集することとなった。しかしながら調査手続きの調整等に時間を要したため,現在もデータ収集中でありいくつかの事例を提供することで経過的実績報告としたい。Aさん50代男性で大学中退。認知能力の低下はなし。絵画配列課題に失敗。軽度な妄想と対人関係障害有り。Bさん30代男性で高卒。認知能力の低下はなし。サリー&アン課題に失敗。軽度な妄想だが自己の視点か発言が多く対人関係は困難。Cさん40代男性で高校中退。認知能力の低下有り。「心の理論」課題すべてに成功。対人関係の問題なく23年間就労している。これらの事例は結果のごく一部ではあるが,認知能力の低下が比較的少なく,かつ「心の理論」課題に困難を示し,対人関係に問題を有する一群の存在を示唆するものである。またCさんのように,認知能力に低下は見られるものの,「心の理論」課題に問題はなく対人的にも適応が高い者もいた。「心の理論」課題の成績とIQには相関があるが,必ずしも直線的な関連があるわけではない。 19年度が最終の研究年度となるので,これまでの研究成果を補完するようなデータ収集を行うととともに,研究成果としてまとめ公表する予定である。
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Research Products
(2 results)