Research Abstract |
本研究の目的は,新規の延髄呼吸性ニューロングループ(傍顔面呼吸グループ,pFRG; Onimaru & Homma,2003)の細胞レベルでの実体(分布・形態,生理学的・薬理学的性質など)及びその役割を明らかにすることにある.昨年度の研究により,pFRGは主にPre-Iニューロンにより構成され,一次呼吸リズム形成および中枢化学受容に重要な役割を果たす可能性があることが示唆された.今年度は,主にpFRG-Pre-Iニューロンによるリズム形成の特徴を明らかにすることを目的として研究を行った.まず,pFRG-Pre-Iニューロンの膜電位と顔面神経活動を同時記録し,μ-opiate agonistであるDAMGOを潅流投与した.これによって吸息性活動が抑制されたが,pFRG-Pre-Iニューロンの活動とそれに同期した顔面神経活動は抑制されることなく記録された.さらに,pFRGとpre-Botzinger complexの間で,延髄を切断すると,顔面神経活動及びC4吸息性活動ともに抑制されたが,しばらくするとC4吸息性活動は回復した.続いてDAMGOを潅流すると,C4吸息性活動は抑制され,顔面神経活動が出現した.この顔面神経活動は高カリウムによって抑制され,CO_2に強い感受性を示し,持続型Na^+チャネルブロッカーriluzoleで容易に抑制された.さらに切断後の,吻側延髄ブロック標本において,顔面神経活動に同期したバースト形成ニューロシが記録された.このバースト活動はDAMGOによって抑制されず,高カリウム投与により抑制されたことから,pFRG-Pre-Iニューロンそのものであると結論された.今回の結果は,pFRGを含む延髄吻側ブロック標本はリズミック活動を発生し,その活動は顔面神経から記録できること,その活動の起源はPre-Iニューロンであることを示している.pFRG-Pre-Iニューロンのバースト形成に,持続型Na+チャネルが重要であり,CO_2の中枢化学受容にも重要な役割を果たすことが確認された.
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