2004 Fiscal Year Annual Research Report
脳脊髄液脳関門を構成する軟膜・グリア性境界膜の発生と破綻のメカニズム
Project/Area Number |
16500219
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
吉川 知志 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (90244681)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺島 俊雄 神戸大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20101892)
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Keywords | リーリン / フクチン / 脳軟膜 / グリア性境界膜 / 海馬裂 / 貫通線維 / アストログリア / 神経回路標識 |
Research Abstract |
まず、リーラーマウスにおける嗅内野より海馬(および歯状回)への投射線維の走行経路の異常の有無を調べるために、成獣において同線維の順行性標識を行った。また、同線維を生後0日より経時的に標識し、その生後発生過程を調べた。その結果、リーラーマウスにおける同線維は、正常マウスのように海馬裂を貫通することなく、海馬裂に沿って走行した後、これを迂回するようにして標的に達していた。生後発生過程においては、0日齢では正常動物、リーラー共に海馬裂を横切る線維の存在が確認された。これらの線維は、正常マウスでは発達に伴い増加したが、リーラーではその後減少し、生後4日で完全に消失していた。このリーラーマウスにおける貫通線維の消失とアストログリアとの関連を調べるために、抗GFAP抗体による免疫組織化学法を試みた。生後0日では、正常、リーラーマウス共に、海馬裂の周辺にアストログリアと思われるGFAP陽性細胞が多数認められた。正常マウスでは、このGFAP陽性細胞は貫通線維の発達と同期するかのようにその後、減少していった。一方、リーラーマウスでは、発生に伴いGFAP陽性細胞は逆に増加し、海馬裂周囲に蓄積することが明らかになった。つまり、リーラーマウスにおいては、本来減少するはずの海馬裂周囲のアストログリアが何らかの理由で増加、蓄積することにより、嗅内野からの投射線維の海馬裂を横断する走行が妨げられるものと考えられる。 次に、フクチン欠損キメラマウスの大脳皮質ニューロンを逆行性、あるいは順行性に標識した後、抗ラミニン抗体による基底膜との2重染色を行い、フクチン欠損による基底膜の崩壊と、皮質ニューロンの位置異常との関連を調べた。その結果、ラミニン陰性の基底膜崩壊部の直下において、皮質脊髄路ニューロンなどが異所性に存在していた。これは、基底膜がニューロンの細胞移動に何らかの形で関与することを示唆している。
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