2004 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー病患者脳におけるCl^--ATPase活性低下機構の解明
Project/Area Number |
16500248
|
Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
服部 尚樹 関西医科大学, 医学部, 助教授 (80288828)
|
Keywords | Cl-ATPase / アルツハイマー病 / アミロイドβ / リンパ球 / ホスファチジルイノシトール |
Research Abstract |
【目的】Cl^--ATPaseは神経細胞内Cl濃度を低く保ち、GABAなどによる抑制性神経伝達を可能にしている。我々はアルツハイマー病(AD)脳でCl^--ATPase活性が低下していること、低濃度アミロイドβ蛋白(Aβ)が培養ラット海馬神経細胞において、Cl^--ATPase活性を抑制し、神経細胞内Cl濃度を上昇させることを見いだした。本研究では検体の採取が容易な末梢血液リンパ球Cl^--ATPase活性のAβによる効果を調べ、ADの早期診断に有用か否かを検討する。【方法】AD患者の血液で検討する前に、健常人の検体を用いて検討した。既に我々は、酵素法を用いた高感度ATPase測定法を確立し、微量膜蛋白中のATPase測定が可能となっている。健常人末梢血よりFicoll Paque法にてリンパ球、好中球、赤血球を分離後、ショ糖密度勾配法にて膜蛋白画分を得た。各血球のCl^-ATPase活性、Na-K-ATPase活性を測定後、10%FBSを含むRPMI1640にてリンパ球を24時間培養し、Aβ25-35(1μM)およびAβ1-42(100nM)の両ATPase活性に及ぼす効果を検討した。更に、これらAβの、リンパ球に対する細胞毒性につき、WST法、LDHを用いて検討した。【結果】健常人末梢血Cl^-APase活性は、リンパ球(0.32±0.10μmolPi/mg protein/h)及び好中球(0.19±0.06)において認められたが、赤血球では認められなかった。他方、Na-K-ATPase活性はリンパ球(0.56±0.11)、好中球(0.18±0.06)、赤血球(0.10±0.05)すべてにおいてその活性が認められた。Aβ25-35(1μM)およびAβ1-42(100nM)はリンパ球Cl^-ATPase活性を有意に低下させ、Na-K-ATPase活性に関しては、低下させる傾向を示した。WSTおよびLDH releaseを用いた細胞毒性の検討では、Aβ25-35およびAβ1-42(100nM)ともに有為な変化を示さなかった。【考察】我々は既にCl^-ATPase活性の維持に膜のPI4Pが必要なことを見いだしている。AβによるCl^-APase活性低下の機序として、PI4 kinase type IIの低下によるPI4Pの低下が関与する事を、本教室で最近明らかにした(J Neurochem 91:1164-1170,2004)。リンパ球においても同様の機序でCl^-ATPase活性が低下することが推測された。
|