2004 Fiscal Year Annual Research Report
心血管系細胞内カルシウムのホメオスタシスにかかわる新たなシグナル伝達機構の解析
Project/Area Number |
16500264
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
木村 佳弘 山口大学, 医学部, 助教授 (90301308)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
乾 誠 山口大学, 医学部, 教授 (70223237)
山田 康枝 山口大学, 医学部, 講師 (00166737)
高 知愛 山口大学, 医学部, 助手 (70314797)
|
Keywords | 心筋小胞体 / カルシウムATPaSe / SERCA2a / ホスホランバン / 心不全 |
Research Abstract |
心筋小胞体膜蛋白質であるカルシウムATPase (SERCA2a)は、心筋小胞体へのカルシウム取り込みを担っている。SERCA2aは、心筋弛緩時に心筋細胞の細胞質のカルシウムを除去し、そのカルシウムは心筋小胞体内腔に貯蔵されて、次の収縮時に筋原線維に供給されるため、その活性は、心筋収縮・弛緩の規定因子である。SERCA2aの活性は、別の心筋小胞体膜蛋白質ホスホランバンによって調節されている。 ホスホランバンはSERCA2aの抑制蛋白質であるため、ホスホランバンとSERCA2aのstoichiometryは重要な心機能決定因子となる。心不全状態では、そのetiologyにかかわらずSERCA2aの発現量の減少と相対的なホスホランバンの増加がみられることが報告されている。この現象は、さらにSERCA2aの活性低下をもたらし、心筋収縮不全・拡張不全と細胞質カルシウム濃度の持続的増加による心筋障害を進めるため、悪循環となる。 本研究では、心不全の代償機転であるとともに心不全の発症機転ともなる心筋肥大をおこす液性因子のSERCA2aとホスホランバンの発現に対する影響を、rat新生児心筋初代培養系を用いて検討した。Angiotensin IIは、SERCA2aを減少させる一方、ホスホランバンの発現は増加傾向にあった。SERCA2aとホスホランバンの動態は、phenylephrine、isoproterenol、endothelin-1では異なることがわかった。 この結果は、心不全のACE阻害薬またはAngiotensin II受容体拮抗薬治療が、心筋細胞内カルシウム動態改善の点でも有利であることを示すとともに、それぞれの液性因子の細胞内メカニズムの差異を明らかにすることにより、SERCA2a活性を維持・増強して心不全治療に応用できる可能性を示唆する。
|