再生医療用細胞足場としての圧縮成型ケラチン多孔体の研究

2006 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 16500298
• Research Institution: Osaka City University
• Principal Investigator: 田辺 利住 大阪市立大学, 大学院・工学研究科, 教授 (20315972)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 山内 清 大阪市立大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00047325) ; 立花 亮 大阪市立大学, 大学院・工学研究科, 講師 (80305614)
• Keywords: ケラチン / 圧縮成型 / NaClリーチング / 多孔体 / 細胞足場 / 再生医療 / 抗原性 / モルモット

Research Abstract

本研究は、再生医療用細胞足場としての使用を目指し、足場内部への細胞侵入と栄養供給が可能となる孔径の大きなケラチン3次元多孔体の作製を目標としている。
平成16年度は、圧縮成型とNaClリーチング法を組合せた孔径調節可能な多孔体調製法を考案し、孔径300〜500μmのケラチン多孔体(空隙率90%)を作製した。
平成17年度はこの多孔体を用いマウス線維芽細胞株L929の培養を試みた。平底遠心管中で多孔体と細胞懸濁液を遠心する方法により、多孔体内部まで細胞を播種できた。しかし、多孔体内部まで細胞を播種した後培養を続けたが、多孔体表面と表面に近い孔中では良好な細胞の増殖が見られるものの、多孔体内部では細胞は増殖しなかった。多孔体内部への栄養補給に問題があると考察された。
一方、乾燥アルギン酸カルシウムビーズ存在下でケラチン水溶液を凍結乾燥し、その後EDTA処理によりアルギン酸カルシウムを除くという方法で、静置培養でも内部へ栄養供給が可能になるような、極めて空隙率の高い多孔体を作製した。得られた多孔体は柔軟性に富み、空隙率は99%に達した。
本年度は、遠心法で圧縮成型ケラチン多孔体に細胞を播種した後、スピナーフラスコ中の回転子に多孔体を固定回転させ培地を強制的に多孔体内部に入れる方法での培養を行った。その結果、多孔体内部においても良好な細胞の伸展・増殖が認められた。
また、ケラチン多孔体の抗原性評価をモルモットを用いて行った。すなわち、モルモットの左背部に検体を埋め込み、3ヵ月後右背部に再度検体を埋め、一日後検体周辺の組織を取り出し病理観察することで評価を行った。対照として臨床使用されている市販止血用コラーゲンスポンジを用いた。その結果、ケラチン多孔体と市販止血用コラーゲンスポンジと同等であることが判明した。また、コラーゲンスポンジに比べケラチン多孔体の生体内分解は遅いことがわかった。