2006 Fiscal Year Annual Research Report
身体運動技能の教授と模倣に関わるヒトの認知過程-その運動神経生理学的機序の解析
Project/Area Number |
16500380
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
笠井 達哉 広島大学, 大学院国際協力研究科, 教授 (60112702)
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Keywords | 認知 / 運動イメージ / 運動誘発電位 / 磁気刺激法 / 運動野 / ヒト |
Research Abstract |
ごく最近では、ヒトの運動学習は、新たた運動技術を修得する「運動技能習得学習」と、すでに獲得した運動技能をより効率的に遂行するための「運動習熟学習」とに分けて理解しようとするようになってきた。即ち、それぞれの運動学習過程に関わる中枢神経系機能は異なっているのではないか、と考えられるようになってきたからである。しかし、その運動神経生理学的メカニズムはまだ十分に解析されておらず、未知なままである。 そこで、本研究は、運動学習に普遍的に関わり、特に中枢神経系が中心的な役割を担っていることが分かっているヒトの認知過程を強く反映する「運動イメージ」のメカニズムに関して、実際の随意運動の遂行と運動イメージの遂行の間で、どのような相違点があるかを解析した。また、学習の結果として惹起する運動学習の変容過程について、認知科学的手法を駆使して解析を行った。具体的には、幾つかの実際の運動を異なった条件下で同じように遂行してもらい、その時発揮される運動の遂行に関わる変数(主に、筋電図と力)を記録した。そして、同じ運動でありながらも、各条件下でこれらの変数の差異を計測した。次に、同じ条件下で、実際の運動は行わないで、頭の中だけで同じように実際の運動を遂行してもらった。このように脳内における実際の運動時に、運動野を磁気刺激して、運動誘発電位を記録した。 実験結果の解析から、実際の運動経験から運動記憶として中枢内に蓄積されていると考えられている事象を「運動イをメージ」として再生しているとき、その中枢神経系での認知過程は、実際の随意運動の遂行過程と同様であり、それは運動イメージの再生に関する「教示」の仕方によって大きく影響を受けた。このことから、運動学習における運動教示の有効性を確認した。そして、その認知過程に関する運動神経生理学的メカニズムの一端を磁気刺激法を用いて初めて明らかにした。
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Research Products
(5 results)