Research Abstract |
申請者たちが新たに開発した,常圧低酸素室内で短時間(1時間以内)で行う高強度の低酸素トレーニングは,通常環境における作業能力を大きく改善させる.本年度は,このようなトレーニングによって身体作業能力が増大する理由について,生理学的な観点から検討した. 8名の体育学専攻学生を対象として,2000mおよび4000m相当高度に設定した常圧低酸素室において,自転車エルゴメーター運動を行った.なお運動は,スポーツトレーニングの実際場面を想定して,持続的な運動と間欠(インターバル)的な運動の2種類について検討した.測定項目は,呼気ガス応答,心拍数,血中乳酸値,筋電図,そして筋内と動脈血内における酸素化レベルであり,それらの応答について包括的に検討した. その結果,通常環境と低酸素環境での生理応答の最大の違いは,筋における酸素化レベルが低酸素環境では著しく低くなっていることであった.すなわち低酸素環境下では,中等度以上の運動強度においてすでに,通常環境下での最大運動時の筋酸素化レベルと等しくなった.そして最大運動時にはさらに著しく低くなることもわかった. この結果は,低酸素環境下でトレーニングをする場合には,中等度以下の運動強度で行ったとすれば,通常環境でのトレーニングでも実現可能であるが,中等度以上の強さ,特に最大運動に近い強度で行うほど,低酸素環境ならではのトレーニングの意義が出てくることを意味する.そしてそれが,我々が新たに開発した低酸素トレーニング法の効果に高い効果があることの根拠になることが推察された.
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