Research Abstract |
(1)性周期・運動トレーニングの影響:女子運動鍛錬者(T群)7名と非鍛錬者(U群)10名に対し,黄体中期と卵胞中期に環境温25℃・相対湿度45%に設定した人工気象室内で50%VO_2maxの自転車運動を30分間負荷した.U群の熱放散(発汗および皮膚血管拡張)反応は女性ホルモン(性周期)によって修飾され,黄体期に熱放散中枢機構の閾値が上昇し,熱放散反応の感受性が低下することから,体温調節の上で不利になることが示唆された.一方,T群には性周期の影響はみられなかったことから,U群にみられた性周期による熱放散反応の抑制は,運動トレーニングによって軽減されることが推察された.さらに,運動トレーニングにより熱放散反応が改善されることが示され,この改善は卵胞期と比べて黄体期でより顕著になることが明らかになった. (2)性差・運動トレーニングの影響:男子・女子のT群(男8名,女10名)とU群(男9名,女10名)の4群に対し,気温30℃・相対湿度45%の環境条件下で35%,50%,65%VO_2max強度の自転車運動を各20分間,計60分間連続負荷し,その際の身体5部位で測定して算出した平均発汗量(SR)・平均活動汗腺数(ASG)・平均単一汗腺あたりの汗出力(SGO)を4群間で比較した.直腸温・平均体温・心拍数は,いずれの運動強度時にも4群間で有意な差はみられなかった.SRは,女性では全ての運動強度時で,男性では50・65%VO_2max運動時で,T群がU群より有意に高かった.男U群vs.女U群の平均SRでは65%VO_2max運動時にのみ男U群が有意に高い傾向だったが,男T群vs.女T群では50・65%VO_2max運動時に男T群が有意に高かった.このSRに観察された運動トレーニング・性差は,ASGではなく,SGO(コリン感受性and/or汗腺サイズの指標)の運動トレーニング・性差に起因した.そのため,運動トレーニングは男女ともコリン感受性の亢進and/or汗腺肥大により発汗機能を亢進するものの,その亢進の程度には性差があり,男性が女性より顕著であることが示唆された.
|