Research Abstract |
本研究では研究の正確から多岐にわたった.その概説を以下に述べる. 被服内環境を考える上で,ヒトを取り巻く環境の因子や被服の素材の性能等の被服自身について考慮することはもちろんである.しかし,ヒトが纏ってこその被服であるので,被服内環境を研究するためには,外部環境,被服,ヒトそれぞれの因子の変化とその相互作用を研究する必要がある.外部環境や被服自身についての研究は数多くあるが,ヒト因子についてのそれが少ない.つまり従来の研究で欠落していた,ヒト自身が環境の変化にどのように応答するかを知ることが,今後の被服開発における重要な鍵となる.そこで,本年度は主に,人体の血流速度,皮膚温,被服圧,下腿および足部の容積の変化に着目した研究をおこなった.これらの成果は,従来気づかずに見過ごしてしまった外部環境の変化に対するヒトの諸機能の変化に焦点をあてたものである.その結果,被服内環境の実態を正確に捉えるために見過ごしてはならない,ヒト側の因子として必要な条件の洗い出しとその影響について明らかにすることができた. ヒトは地球上の生物であるが,ヒトが生活をしている地球は自転や公転によって常に変化し,ヒトを取り巻く環境(被服外環境)は絶えず変化している.そんな中でヒトは自覚せずとも,地球環境に適応すべく様々に変化しながら,生体内を制御していると考えられる.本年度はヒト側の影響因子と考えられる,皮膚温,血流速度,ウエストベルト圧,下腿および足部の容積変化などを取りあげて検討した.本年度の研究の成果から,これらヒト側の因子は環境温度によって有意に変化することがわかった.つまり,積極的に環境温度を変えずとも,季節の推移に伴って変化しているのである.さらに,血流速度は日内変動し,ウエストベルト圧と下腿および足部の容積は更に月経周期の位相によっても有意に変動することがわかった.つまり,環境温度や月経周期,日内変動を考慮すれば,より快適な被服内環境を実現できるのである. 今後,開発した特定小型無線局を用いた被服環境計測システムを用いて,更に実生活の即した被服内環境のデータを蓄積し,人体の機能を介助する製品の開発に必要な設計の基本指針を導き出す所存である.
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