2006 Fiscal Year Annual Research Report
現代社会における年齢差別(エイジズム)の実態解明と高齢化教育の推進
Project/Area Number |
16500475
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
杉井 潤子 奈良教育大学, 教育学部, 助教授 (70280089)
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Keywords | 高齢者 / 年齢差別(エイジズム) / 虐待 |
Research Abstract |
現代社会における年齢差別(エイジズム)意識生成プロセスの解明と、高齢者に対する「不適切な対応」に関する行為実態および意識の解明という二つの分析枠組を想定し、2006年1月に近畿40歳以上の男女1840人を対象に意識・実態調査を行なった。原田らが開発した日本語版Fraboniエイジズム尺度(FSA)短縮版を用いて14項目5件法による加算得点によるエイジズム尺度を従属変数として年齢、健康状態、性別、暮らしぶり、職業の有無、学歴、居住地、婚姻状況、要介護高齢者の有無による重回帰分析の結果(F-value=10.607調整済R^2=.077 p<.001^<***>)、統計的に有意な影響を与えたのは年齢、健康状態、性別、居住地であった。 1)高齢者・病弱者による自己排除と差異化 年齢や健康状態はエイジズムに有意な影響を及ぼすことが明らかとなった(p<.001^<***>)。高齢者ほど高齢者を差別・排除する意識が強いことを示しており、老いや依存的地位を実感することによって自己排除をしていくこと、また高齢者間で高齢者を客体化することにより差異化が生じていることが推察できる。 2)男性による差別 男性のほうが女性よりもエイジズムをより強くいだくという結果となった(p<.001^<***>)。ジェンダーの観点から男性の優位性が影響を及ぼしていること、また高齢者の性比から差別・排除の対象となる高齢者が女性である割合が高いことなども関連しているのではないかと推察される。 3)都市部における差別 大都市居住者ほどエイジズムを強くいだいているという結果となった(p<.05^*)。伝統的家族規範の希薄化、都市生活における匿名的かつ選択的な人間関係のなかで、弱者・依存者に位置づけられる高齢者が社会的に排除されていく傾向があることが推察できる。
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Research Products
(1 results)