2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16500476
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
冨士田 亮子 岡山大学, 教育学部, 教授 (00069163)
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Keywords | 日常清掃 / 住宅の維持管理 / 『婦人之友』と『住宅』 / 清掃関連記事 |
Research Abstract |
住宅の清掃は、居室を美しくし、清潔な暮らしのために必要なばかりでなく、居住者によって日常的に住宅内外の点検や小修理なども行われることから、住宅の維持管理上も必要な基本的な作業である。近年、住宅の長寿化が目指されているものの、住宅そのものばかりでなく住生活も大きく変化し、清掃は行われにくくなっている。 清掃をはじめ家庭生活に関する伝承が廃れ、知恵が受け継がれ難くなっていることから、居住者が住宅の維持管理にどのように関わっていけばよいのかを住宅の清掃をとおして明らかにするするため、明治以降に出版された月刊誌の掲載記事を採取して、清掃や住宅の維持についての考え方を明らかにする。 対象とした月刊誌は『住宅』と『婦人之友』である。採取時期は、『住宅』では創刊号(1916年)から廃刊(1943年)までの28年間、また、『婦人之友』では創刊号(1908年)から昭和期(1988年)までの81年間である。 清掃をはじめとした住宅の維持管理に関する記事を収集し、記述内容の分析を行った。清掃についての考え方、担当者、清掃場所、清掃方法、その他清掃や維持管理に関することを分析軸として検討を行った。 『婦人之友』で採集した清掃関連の記事は64である。(1)掃除の担当は、中流家庭の場合、女中(昭和10年代にお手伝いさんに変更)であったが、女中難や女中への躾が難しくなって、主婦へ移ってゆく様子と、家族へ分担する方向が見える。(2)住宅内での清掃場所は、主に居住室、縁側の畳や板の間、浴室、便所、窓ガラスであり、掃除機が普及する以前は、はたき、箒、雑巾を用いて、はたく→掃く→水拭きの順に、毎日、朝食前に行っていた。(3)掃除用具ごとの準備数、置き場所、扱い方及び手順について図示され詳しい説明があるので、掃除への取り組みや清掃技術については記事を通して実際の生活にすぐ役立つ学習ができるようになっている。(4)「おから(卯の花)」を用いてつや出ししたり、灰汁洗いをしており、住宅を美しき磨くことに主眼が置かれている。(5)掃除は年中、計画的に行われているので、改まって大掃除を必要としていない。以上、清掃は家事労働として捉えられ、時間や労力の管理を重視した視点で書かれている。日常生活を丁寧に営み、美しく清潔に住むことに主眼が置かれている。 『住宅』は『婦人之友』に比べて掲載記事が少ない。掃除は女中の仕事であったので、労賃などの点から女中を雇用する代わりに、掃除機を用いたり、軽減するなどの合理的な方法を見いだそうとしている。また、清掃方法について具体的な記述は少ないものの住宅を扱うものからの視点が見られる。
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