2004 Fiscal Year Annual Research Report
食物アレルギー予防に向けた超高圧処理による鶏卵白の低アレルゲン化
Project/Area Number |
16500506
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
小谷 スミ子 新潟大学, 教育人間科学部, 教授 (60018653)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 敦士 新潟大学, 農学部, 教授 (40018792)
原 崇 新潟大学, 農学部, 助教授 (20323959)
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Keywords | 卵アレルギー / アレルゲン / オボムコイド / 高圧処理 / ELISA / IgE抗体 / エピトープ / 蛍光スペクトル |
Research Abstract |
卵アレルギーは乳幼児に最も頻度高く発症する即時型食物アレルギーの一つである。卵のアレルゲンは主に卵白に含まれるタンパク質であるが、中でも特に強いアレルゲン性を示すのがオボムコイド(OVM, Gal D1)である。OVMは特異な分子構造により加熱処理や化学的処理に対して高い抵抗性を示し、そのアレルゲン性を完全に除くことは難しい。本研究では、加熱処理とは異なる新しい食品加工法である高圧処理をOVMに行い、卵アレルギー患者血清IgE抗体との結合性をELISA法で構造変化をCDスペクトルと蛍光スペクトルから検討した。 高圧処理したOVMの卵アレルギー患者血清IgE抗体との結合性は100〜400MPaと圧力が低い領域では圧力に依存して低下したが、500、600MPaと圧力を上昇させるとむしろ増加した。CDスペクトルからは高圧処理したOVMの2次構造の変化は認められなかった。OVM分子に含まれるチロシン6残基のうち5残基は、抗OVM・ヒトIgE抗体が認識し結合するOVM抗原のアミノ酸配列(IgE抗体エピトープ)に含まれる。これらのチロシンを内在蛍光プローブとして蛍光スペクトルを測定したところ、極大吸収波長は400MPaまでは圧力上昇に伴い長波長側に移動した。このことはチロシン残基が分子内部の疎水領域から親水性環境である分子表面に移動していることを示唆する。また常圧にもどしても極大吸収波長は高圧処理前の水準まで回復しなかったことから、OVMの構造変化が不可逆的なものであると考えられる。 これらのことから高圧処理で生じたOVMの高次構造変化は、IgE抗体エピトープの構造変化を誘導し抗体結合性を低下させたものと考えられる。即時型アレルギーの要因であるIgE抗体との結合性の低下はアレルゲン性の低下にもつながると考えられる。
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Research Products
(2 results)