2004 Fiscal Year Annual Research Report
旧日本軍の科学技術研究の構造とその国際水準についての実証的研究
Project/Area Number |
16500633
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
常石 敬一 神奈川大学, 経営学部, 教授 (00039786)
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Keywords | 軍事医学 / 生物兵器 / 化学兵器 / 疫学 / 軍事科学 / 感染症 |
Research Abstract |
本年度もっとも重点的に取り組んだのは、本研究の交付申請書に書いた、「米国の議会図書館に旧日本軍の生物兵器研究開発の重要な資料、『防疫研究報告』2部が約800冊、保管されており、この分析」であった。分析は現在進行中だが、とりあえず1936年の浜松でのゲルトネル菌による食中毒、および1940年の中国・長春(当時の呼称で新京)のペストについての論文、特に疫学的研究に焦点を当てたものが中心、の分析を終えた。時代的に軍部が力を持っていたこと(浜松)、また実質的な植民地での調査(新京)ということもあり、その疫学的調査は徹底的である。ここまで網羅的に行えば疫学的調査もそれなりに有効だろうが、それは現代の日本その他の所謂先進国では不可能とも思われる。これは結果として、疫学という手法は英国で発達したものだが、それは植民地経営と密接なつながりがあったのではないかという推測をもたらす。これは今後の研究課題である。 本年度は米国とフランスに出張した。米国は上記研究のため、コピー(マイクロフィルム)では不鮮明な部分や欠けている部分を実際に確認し、内容を充分に把握するために米国議会図書館に出張し、「防疫研究報告」2部を精査した。その結果、コピーでは読み取れない、この文書を押収し、分析した米国人による鉛筆での書き込みを読み込むことができ、当時の米国の軍事医学者たちの興味のありようを知ることができた。また日本軍が最初に購入した毒ガス製造装置はフランスの化学会社からだったが、その経緯や第1次世界大戦での化学戦を調べるためにフランスに出張し、公文書館などで資料収集を行った。
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