2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16500641
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Research Institution | (財)元興寺文化財研究所 |
Principal Investigator |
井上 美知子 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 技師 (70223279)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 健司 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (00176330)
植田 直見 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10193806)
藤田 浩明 (財)元興寺文化財研究所, 研究部, 技師 (50344403)
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Keywords | 出土木製品 / クリ / ポリエチレングリコール / 収縮 / 変形 / 再処理 / 含水率 / 劣化 |
Research Abstract |
前回(昨年度)は、変形を生じやすいアカガシ・クリ・クヌギの出土木材のPEG含浸処理で変形した試験片の回復試験をおこなった。その方法として(1)PEG水溶液濃度を80%から20%ずつ序々に下げる、(2)60℃の水に浸漬、(3)水に浸漬の3法をおこなった。その結果、いずれの方法においても回復率3%未満となりほぼ元の形状にもどった。PEG含浸中に大きく収縮したにも関わらず水を与えれば順調に回復した原因として試験に用いた材の劣化が小さかったことが考えられた。そこで、今回は、劣化の大きい(含水率の高い)クリ、クヌギを用いて同様の実験をおこなった。 今回は、前回より含水率の高いクリとクヌギを用い、PEG含浸および回復試験中の重量と寸法の変化を追跡した。 前回の出土材の含水率がクリでは100〜180%と非常に低く、PEG含浸中には低濃度から重量の減少と収縮が進み、最終的に重量が約30%減少した。回復試験中は、前回は水分が多くなるほど回復が進みほぼ形状回復した。 それ対し、今回のクリは含水率が600〜800%と高くPEG含浸中は60%水溶液まで重量が増加したが、80%・溶融液浸漬で重量と寸法の減少がみられた回復試験中はPEG80%・60%まで寸法と重量の増加がみられ処理前に近い値になったがPEG40%では寸法はほぼ横這いで重量は減少傾向であった。PEG20%・水浸漬でさらなる寸法と重量の減少がみられた。 以上より、形状を回復するには含水率の低いものは水まで、高いものはPEG40〜60%まで水溶液濃度を下げることが有効である。しかし、大型遺物では部位により含水率が異なることが予想される。このような場合、PEG20%か水まで戻し寸法変化の差をなくすることが有効と考えられる。 次の課題として部位により含水率の異なる大きな試験片を用いて実験を行なう予定である。
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