2006 Fiscal Year Annual Research Report
農山村におけるプロダクティブエイジング創成とその社会的持続性に関する地理学的研究
Project/Area Number |
16500649
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
菊地 俊夫 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (50169827)
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Keywords | プロダクティブエイジング / 社会的持続性 / ソーシャルネットワーク / ソーシャルキャピタル / 集落営農 / 農業維持システム / 認定農業者 / コラボレーション |
Research Abstract |
プロダクティブエイジング(productive aging実りある加齢)は、高齢者が経済的な生産活動を行うことで、生き甲斐をもちながら地域に居住し生活することであり、そのような現象の実態解明と地域への影響分析を中心に研究を進めた。プロダクティブエイジングの主要な類型の1つである大都市近郊外縁部の老人専業型を八王子の地区の酪農業と滋賀県湖北地域の水稲作に関連して調査した。前者の事例では、プロダクティブエイジングが新鮮で安全な牛乳を地元住民に供給するとともに、学校教育の総合学習や郷土学習の活動を通じて、農業環境資源やルーラルティの維持に貢献し、流入してきた都市住民コミュニティとの社会的持続性を、ソーシャルネットワークやソーシャルキャピタルを十分に構築することで達成してきた。この事例に関する結果は、2006年7月にイオーストラリアで行われた国際地理学会で公表され、その議論を通じて外国の事例との共通性と異質性が明らかにされた。後者の事例では、プロダクティブエイジングが水稲作を維持するための集落営農に重要な役割を果たしてきたことを明らかにした。集落営農は集落内の専業農家や認定農家が兼業や離農する農家の農地を社会的契約に基づいて耕作し、農業を維持する制度である。そのような制度の中で、湖北地域の集落営農の担い手は壮年層の農業者と老年層のプロダクティブエイジングであり、それらが組み合わさって農業維持の効果をもたらしている。このような壮年層の労働力と老年層のプロダクティブエイジングのコラボレーションは、ソーシャルキャピタルに基づくソーシャルネットワークに基づいている。以上に明らかにしてきたように、プロダクティブエイジングはその活用法や多機能とのコラボレーションにより、農業維持システムのドライビングフォースとなる。次年度は都市遠郊のプロダクティブエイジングの事例調査を行い、プロダクティブエイジングの創成と効用を検討する。
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