2006 Fiscal Year Annual Research Report
流域での水質形成過程と酸性湖沼の自然回復との関連及び水質応答予測モデルの開発
Project/Area Number |
16510002
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
日野 修次 山形大学, 理学部, 助教授 (10272056)
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Keywords | 猪苗代湖 / 酸性湖沼 / 水質形成過程 / 炭素循環 / リン制限 |
Research Abstract |
猪苗代湖は,過去10年間に渡ってpHの緩やかな上昇が観察されているが,この原因は明確にはされていなかった。また,2003年より,湖内の20μm以下の微細な植物プランクトンによる光合成(一次生産)量は低下しており,この原因が無機炭素の減少によるものか,光制限などの物理的な制限であるのかを特定しようと試みた。 得られた結果として,猪苗代湖の年平均C:N,C:P比は,表層,5m層でそれぞれ,11±2と330±110,12±9と362±76,2005年は8.5±1.0と354±82,8.7±1.1と324±51であった。C:P比が非常に高いことに加え,湖の全リン濃度が検出限界である0.10μmolL^<-1>以下であったことから,植物プランクトンの生長がリンに厳しく制限されているのは明らかである。また,湖内のpHと溶存炭素種の間には密接な関係があることが知られており,猪苗代湖は弱酸性湖であることから二酸化炭素として溶存していると考えられたが,測定してみると二酸化炭素(CO_2)分圧が低いため,総溶存無機炭素も低井ことが明かとなった。これまでに光合成を行う植物プランクトンにとって制限的に働いていることが,これまでの研究代表者(日野)の研究によって明らかになっていることから,このような湖沼では,栄養塩濃度の増加よりもCO_2分圧が低いことによる影響の方が大きいことを示している。湖内のCO_2分圧のほか,他の形態(炭酸イオン,炭酸水素イオン)で存在するものについて河川からの供給を考えた場合,もっと湖内の濃度が高くても良いはずであるが,そのようにはなっていないことも明らかになった。表層だけではなく,深い場所においても同様な傾向があり他の湖沼との違いが確認された。これは,猪苗代湖の炭素循環を考える上で重要な知見であった。
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