Research Abstract |
環境汚染物質の影響を測定する方法として,主に物理化学的検定法と生物学的検定法(バイオアッセイ)が挙げられる.物理化学的検定法は、汚染物質がある程度予測されている場合,単一物質を定性・定量する事が出来るが,混合系でかつ未知物質については,環境への影響評価に適していない.この点,生物学的検定法は,それぞれの化学物質の濃度を測定出来るわけではないが,人体への影響に焦点を当てるので,生物材料(齧歯動物などの哺乳動物、魚介類、藻類、単細胞など)を用いて,迅速な毒性評価ならびに遺伝子毒性解析を行うことが出来る.従って,我々は,"生物学的検定法"が環境規制ならびに保護に適していると考えている. そこで,本研究では酵母DNAマイクロアレイを用いたこれまでの操作方法を基に、汚染気体をモニタリングする方法への応用を試みた.迅速な毒性評価に適している酵母菌(Saccharomyces cerevisiaeS288C)を用いることで、高圧気体に暴露された酵母細胞の全遺伝子の発現特性を,DNAマイクロアレイを用いて測定することが出来た. 基礎実験として,本研究では,酵母を空気,酸素,窒素,亜酸化窒素に高圧下で暴露した後,mRNAの発現特性を分析した。マイクロアレイ解析結果を用いたMIPSデータベースの機能別分類に従って分類した結果,空気処理と酸素処理では"酸化ストレス応答"に関連する遺伝子が顕著に誘導されており,酵母細胞の応答には酸素が大きく関与していることが推察された.窒素処理は,ストレス関連の遺伝子が誘導されていたが,酸素や空気で多く誘導されているレドックス制御に関連するような代表的な遺伝子は確認されなかった.また,亜酸化窒素処理では"シトクロムP-450関連の解毒"に関連する遺伝子の誘導が確認されたことから,亜酸化窒素は酵母細胞に対して,空気,酸素とは異なる影響を及ぼしたと考えられる.
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