2004 Fiscal Year Annual Research Report
泥炭湿地の環境変化が土壌微生物群集の多様性および機能に及ぼす影響
Project/Area Number |
16510030
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
広木 幹也 独立行政法人国立環境研究所, 生物圏環境研究領域, 主任研究員 (40142103)
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Keywords | 湿地 / 泥炭 / 土壌微生物 / 多様性 / 機能 / セルロース |
Research Abstract |
北日本や山間部の湿地では低温、高水分などの環境条件によって有機物分解が抑制されるため、未分解の植物遺体が蓄積し、泥炭地を形成する。このような生態系の形成および物質循環過程では、植物遺体の主要成分であるセルロースを分解する細菌類が重要な役割を果たしている。一方、このような湿原の自然的、人為的環境変化は底質中の微生物群集の多様性にも影響を及ぼし、微生物相の変化を通して底質の生態的機能にも影響をもたらすと考えられる。そこで、湿原環境とセルロース分解細菌相、生態的機能の関係を解析する手始めとして、日本国内3地域(北海道釧路湿原、福島県赤井谷地、日光戦場ヶ原)の栄養環境、植生の異なった泥炭湿地8箇所において調査を行い、セルロース分解細菌を単離し、その機能的多様性をBiolog systemを用いて炭素源利用性パターンの違いから解析した。 希釈平板法で測定したセルロース分解細菌数は、河川水の影響を受け、比較的富栄養な環境にあるヨシ原あるいはハンノキ林の方が、貧栄養なミズゴケ高層湿原よりも多く、その中には放線菌も多く含まれていた。ミズゴケ高層湿原で優占していたセルロース分解細菌(S菌)の炭素源利用パターンは比較的単純で、糖類、炭水化物の多くを利用できたが、利用できる有機酸、アミノ酸類は限られていた。一方、ヨシ原やハンノキ林からはS群の細菌が利用できない有機酸類、アミノ酸類なども炭素源として利用できる細菌(E群)が分離された。環境による細菌相のこのような違いは、各環境で細菌が利用できる有機物の質的違いを反映していると思われ、また、富栄養な湿地では多様な炭素源を利用できる微生物が生息する結末、比較的分解しにくい有機物も速やかに分解されることが考えられた。
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