2006 Fiscal Year Annual Research Report
泥炭湿地の環境変化が土壌微生物群集の多様性および機能に及ぼす影響
Project/Area Number |
16510030
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
広木 幹也 独立行政法人国立環境研究所, 生物圏環境研究領域, 主任研究員 (40142103)
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Keywords | 湿地 / 泥炭 / 土壌微生物 / 多様性 / 機能 / セルロース |
Research Abstract |
北日本の湿地では低温、高水分などの環境条件によって有機物分解が抑制されるため、未分解の植物遺体が蓄積し、泥炭地を形成する。この様な場所では、貧栄養な環境条件で特徴のある生態系が形成されている。これまで、本州中部の湿原の調査から、湿地周辺からの土砂の流入が湿原の植生に影響を及ぼしていることが示唆されており(伊藤ら2005)、この様な自然的、人為的環境変化は植生のみでなく、土壌の微生物性、物質循環機能にも影響して、それがさらに植生にも影響することが考えられる。そこで、湿原土壌の理化学性、微生物性に周辺林地がどの程度影響しているかを、北海道釧路湿原において調査した。 調査は、湿原の周縁から湿原内部に向けて140mのラインを想定し、20mおきに調査地点を設け、周縁からの距離と泥炭の理化学性、微生物性および植生の関係を調査した。その結果、泥炭間隙水のpHは各地点とも6以上であり、湿原中央部(pH5.5ぐらい)より高い値であったが、ECは周縁から60m地点までは9-10mS/mであったのに対して、80m地点から漸減し、140m地点では4mS/m程度まで低下した。また、泥炭中の灰分も35%から15%に低下し、無機鉱物の混入がECの増加に関わっていると思われた。グルコシダーゼ活性は、地点間差は大きかったが、周縁から離れるにつれて増加する傾向にあり、分解酵素が蓄積している可能性が示された。微生物数は、周縁部からの距離に対して明確な傾向は認められなかったが、他の地点より特異的に微生物数の低い地点が認められた。この地点はEC、pH、温度ともに周囲より低く、表面水でなく、湧水の存在が土壌環境に影響し、微生物活動を低く抑えている可能性が考えられた。
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