2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16510041
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Research Institution | Institute for Environmental Sciences, University of Shizuoka |
Principal Investigator |
伊吹 裕子 静岡県立大学, 環境科学研究所, 准教授 (30236781)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 典男 静岡県立大学, 環境科学研究所, 教授 (10169039)
内藤 博敬 静岡県立大学, 環境科学研究所, 助教 (30254262)
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Keywords | 多環芳香族炭化水素 / 紫外線 / DNA二本鎖切断 / ヒストン / histone H2AX / クロマチン |
Research Abstract |
昨年度までの研究により、多環芳香族炭化水素(PAHs)と紫外線の複合作用によりヒストンH2AXのリン酸化(γ-H2AX)が誘導されることを明らかにし、さらに、γ-H2AXを指標とすることにより、通常のアッセイ法に比べ数百倍の感度で複合毒性を検出可能であることを示した。そこで本年度は、γ-H2AXを指標とするアッセイの汎用性を検討する目的で、各種環境汚染物質と光の複合作用とγ-H2AXによる評価にっいて検討した。ここでは、その代表例として、環境汚染物質としてPAHsを含む原油、そしてその光酸化物の評価について述べる。 原油に擬似太陽光照射を行い、水溶性画分を得た。ヒト皮膚ケラチノサイトと繊維芽細胞に作用させ、UVAを照射した場合、擬似太陽光照射していない原油の水溶性画分では、γ-H2AXの誘導は認められなかったが、擬似太陽光照射された原油の水溶性画分は、UVA照射下、明らかなγ-H2AXの誘導が認められた。また、パルスフィールドゲル電気泳動によるDNA二本鎖切断の解析においても明らかなDNA切断が認められた。HPLC、GC-MSによる解析により、擬似太陽光照射後、数種のPAHsの酸化体が同定された。つまり、γ-H2AXを指標として、実際の環境中において変化した化学物質の光毒性を高感度に検出できることを明らかにした。また、これまで、原油の水溶性画分に、DNA損傷を引き起こす能力があることは報告されていないが、本研究により、発癌に関連するDNA損傷を有することが明らかになり、環境リスク評価において、光との複合影響を考慮する意義を示唆した。これまでの環境物質の評価においては、クロマチン構造変化に視点をおいた評価は少なく、光の影響を考慮したものは皆無であり、今後、他のヒストンの修飾を指標とした新たな系を構築して行く予定である。
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Research Products
(5 results)