2004 Fiscal Year Annual Research Report
水田土壌におけるアンチモンの存在形態及び移行挙動に関する研究
Project/Area Number |
16510050
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
半澤 有希子 特殊法人日本原子力研究所, 環境科学研究部, 研究員 (30354856)
|
Keywords | アンチモン / 水田 / 酸化還元 / 移行挙動 / 土壌 / 存在形態 / 吸着 |
Research Abstract |
冠水の有無により酸化還元状態が変化する水田におけるアンチモンの移行挙動を模擬した室内実験を行った。50℃で乾燥後の水田土壌試料に初濃度0.4ppmのアンチモン溶液(Sb(III)としてはSbCl_3など、Sb(V)としてはKSb(OH)_6を溶かした溶液)を接触させた。このとき、土壌表面に空気が触れる程度に溶液に浸した状態(冠水無し)と、溶液が土壌の上まで覆った状態(冠水有り)の2条件について検討した。7日間の接触後、液相(土壌水及び上澄み)中のアンチモンを定量し、土壌への吸着の程度を示す分配比を求めた。またイオンクロマトグラフ装置に誘導結合プラズマ質量分析計を結合したオンライン測定系(陰イオン交換カラムとしてPRP-X100、溶離液としてフタル酸2mM-EDTA20mM(pH4.5)を使用)により、液相中のアンチモンの価数別分離評価を行った。 昨年度までの研究により、Sb(V)はSb(III)より土壌への吸着が小さいことが分かっているが、Sb(III)溶液を接触させた実験では、「冠水有り」に比べ「冠水無し」で分配比の低下が見られ、Sb(V)を接触させた場合と同程度の値となった。またこのときの液相中の全Sb濃度に対するSb(V)の割合は「冠水無し」の方が「冠水有り」より大きかった。これらのことより、土壌表面に冠水が無い状態では、Sb(III)のSb(V)への酸化が進むと考えられる。 本研究の結果より、水田におけるアンチモンの移行挙動について、夏季に冠水のある状態では大気降下物由来等のアンチモンが土壌中に蓄積し、冬季に冠水のない状態となるとアンチモンの酸化が進んで土壌への吸着が小さくなり、移動性が増大する、というシナリオが想定できる。
|