2005 Fiscal Year Annual Research Report
放射線による遺伝的影響を分子レベルで検出する実験系の開発に関する研究
Project/Area Number |
16510051
|
Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
山内 正剛 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線安全研究センター低線量生体影響プロジェクト, 研究員 (00260240)
|
Keywords | 突然変異 / マウス / 反復配列 / 放射線 / サザン解析 / 生物影響 / 遺伝影響 / DNA |
Research Abstract |
本研究計画は、実験用マウス系統を用いて、3グレイ以下の低線量のX線による生殖細胞突然変異をサザン法により解析し、X線の継世代影響を定量的に明らかにしようとするものである。 解析用マウスDNAは、当所の第1期中期計画において実施された低線量生体影響プロジェクトにおけるマウスゲノムDNAシークエンシング解析のために調整された試料を流用した。 約500匹のマウスより抽出精製したゲノムDNA試料について、10箇所のSTSマーカー領域(130568、131443、141035、142454、144547、161305、178225、185566、186223、225927)、2種類のゲノム遺伝子領域(Aprt、Hprt)、ならびに1種類の反復配列領域(Ms-6hm)について、シークエンシング解析と並行してサザンブロット解析を行った。STS領域ならびにMs-6hm反復配列についてはマウスゲノムDNAのHaeIII消化物を、ゲノム遺伝子領域については、EcoRI消化物を用いて解析を行った。 サザン解析の結果、STS領域ならびにゲノム遺伝子領域においては、被ばく親マウスとF1の間で検出されるバンドパターンに変化はみられなかった。一方、シークエンシング解析によりSTS領域のひとつである178225領域においては、3グレイのX線に被ばくした父親マウスに由来すると推定される塩基配列の消失が検出された。したがって、シークエンシング解析により検出された継世代影響は、サザン解析では検出されないような小さな突然変異であったことが示唆され、シークエンシング解析による継世代影響研究の有効性が示された。なお、その他のSTS領域やゲノム遺伝子領域における継世代影響はシークエンシング解析によっても検出されなかった。 また、Ms-6hm反復配列においては、非照射対照群においては約5%のF1において動的突然変異が検出され、1グレイ照射群においてはF1の約7%において、3グレイ照射群においてはF1の約9%において動的突然変異が検出された。以上のことから、超可変反復配列では継世代影響を鋭敏に検出できるが、必ずしもその他のゲノム領域における継世代影響の発生を示すものではないといえる。本助成研究により、放医研中期計画の成果は格段に精度の高いものとなったといえる。この場を借りて感謝したい。
|
Research Products
(2 results)