2004 Fiscal Year Annual Research Report
重粒子線低線量照射で誘発される生物効果のバイスタンダー効果とそのメカニズム解明
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16510052
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
鈴木 雅雄 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線安全研究センター, 研究員 (70281673)
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Keywords | バイスタンダー効果 / 高LET重粒子線 / ヒト皮膚由来正常細胞 / 突然変異誘発効果 / クロマチン切断誘発効果 / hprt遺伝子座 / 早期染色体凝縮(PCC)法 / 細胞間情報伝達 |
Research Abstract |
項目別目的1.低エネルギー炭素イオンビームの細胞照射法の確立。 核子当たり6MeVの低エネルギーの炭素イオンビームの水中飛程は140μmと計算される。この様な低エネルギーのイオンビームを細胞照射するためには、申請書『研究計画・方法』項目別目的1に掲げた問題点を解決する細胞照射法(容器)を確立しなければならない。そのために、市販されている直径35mmのプラスティックディッシュに直径6.5mmの穴を電気ドリルで空け、そこに市販されている中で最も厚さが薄い厚さ2.5μmのマイラフィルムを張って培養細胞をディッシュの内側に付着させ、付着面の外側からビームを照射する方法を開発した。この方法で全て満足させる照射が実行出来る事を確認した。 項目別目的2.ヒト由来の正常細胞の細胞致死効果に対するバイスタンダー効果 以下に示す細胞への炭素イオンビーム照射方法(1〜4)を用いて、ヒト皮膚由来正常細胞の細胞生存率求め、比較し、バイスタンダー効果の誘導の有無とそのメカニズムを検証した。 1.細胞付着面全体に一定数の炭素イオンを照射 2.細胞付着面全体を照射したサンプルと非照射のサンプルを一対一で混合 3.細胞付着面の半分のみを照射 4.半分のみを照射し、同時に細胞間情報伝達阻害剤を併用 得られた結果から細胞生存率は、1と3の照射条件でほぼ等しく、2の照射条件で前者より有意に高いというものであった。この結果は、3の照射条件で直接イオンビームのヒットを受けていない細胞も何等かのメカニズムによって細胞死に導かれた事を明確に示すものであり、ベイスタンダー効果が誘導されたと考える。次に、3の照射条件で同時に細胞間情報伝達を遮断した場合(4)は、細胞生存率は2の条件の場合とほぼ同レベルまで高くなることが判った。この結果は、接触した細胞間の情報伝達が、観察された細胞致死効果に対するバイスタンダー効果のメカニズムに重要な意味を持っていることを示唆するものである。
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